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なぜベトナム(史)の研究を?-自己紹介その3

P1020207ランソンの昼食

「なぜベトナム(史)の研究を?」という質問をされた回数は数え切れない。拙著『中世大越国家の成立と変容』(大阪大学出版会、2011年2月)の後書きにも嫌味を書いたが、この質問のウラにあるのは「あなたはとても変人ですね」ということだ。表面上のベトナム観光、料理、あるいは投資のブームにもかかわらず、ベトナムに関する専門知識は、あいかわらず「超マイナー」の域を出ない。

変人であることは、いまさら隠そうと思わない。しかも以下の話を、私の友人や学生はさんざん聞かされているのだが、ブログを新設した機会に、あらためて理由を書いておこう。

1955年生まれの私はベトナム反戦運動に参加したことはないが、「社会」や「世界」に関心をもちはじめる中学・高校時代は、ベトナム戦争の時代だった。なにしろ横浜に住んでいながら首都圏の大学には行かない、野球の応援はパ・リーグなどなど、万事あまのじゃくで多数派・主流派にくみするのが大嫌いな私が、「ベトナムや東南アジアの歴史は、日本にほとんど専門家がいないらしい」などと聞いてしまったものだから、すっかりその気になって、京大に入って東南アジアの歴史を研究しようと決意してしまったのである。日本国民はジャイアンツのV9などという暴虐に苦しんでいる。ベトナム人民はアメリカ帝国主義の侵略に苦しんでいる。両方闘わなければならない。
 *注 もうひとつベトナムを選んだ理由があった。同じ高校に通った私の姉は帰国子女で英語が得意だったのだが、フツーに日本で育った私は英語が大の苦手で、地元の公立中学はともかく、受験名門校であるは高校では成績が悪かった。ある試験でとくにひどい点をとったとき、口の悪い英文法の教師が「君、本当にあの桃木さんの弟?」と尋ねた。純真な(?)少年の心は深く傷つき、同時にアメリカへの憎しみがふつふつとわき上がってきたのだ。「自分をこんなに苦しめるアメリカは、ベトナムで負けるがいい」。大学入試でも英語の点はまったくお粗末だった。10年あまりのちベトナムに留学して、英語もできないような人間は何語を勉強してもしんどい、ということを思い知ることになるとは、そのときには予想できなかった。

「ベトナム戦争から入った」研究者には近現代史や革命史を専攻した方が多かったのだが、もともと日本の戦国時代など前近代史に関心が強かった私は、大学では前近代史か歴史地理が勉強しようと考えていた。実は入学時点では邪馬台国の研究にかなり心ひかれていたのだが、2回生に上がったばかりの1975年4月30日に実現したサイゴン解放、これで私はベトナム史から離れられなくなった(当時は2回生の終わりに専攻を決定する仕組みだった)。その秋には、ジャイアンツが史上初の最下位になった。1975年は、わが人生最良の年だった。

その後も他人のやらないマイナーな研究を貫いていたら(いまや人気の「海域アジア史」も、最初は同様だった)、私よりもっと頭脳優秀な人たちを差し置いて、世間で有名大学といわれる大学の教授にまでなってしまった。しかし、ベトナム(史)を選んでよかったと思うのは、そうした卑俗な理由だけではない。

高校生の頃すでに、ベトナム料理はとてもおいしい、アオザイ女性はすばらしく魅力的だ、などの報道がなされていた。後者は残念ながら「深く研究」するチャンスがなかったが(ジェンダーと権力に関する論文も書いたりして、魅力のカゲにある強さは理解したつもりですが)、食い意地の張った私にとって、たしかにベトナムは食の天国だった。一般の料理やフルーツだけでなく、餅菓子などスイーツがおいしいことは、甘党の私にはこたえられない。この記事をかいているあいだにもヨダレが出そうである。ほかにも音楽や美術、旅行など、ベトナムのユニークさやすばらしさを味わえる分野はたくさんある(残念ながら鉄道はたいしたことがないが)。歴史学(東洋史学)の分野でも、どうしてもっとベトナム史を研究したがる学生が増えないのか、不思議でならない。






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プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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