教養教育とジェンダー

小浜正子さんのブログ
http://blog.goo.ne.jp/mkohama2011/
く、に書かれている土曜日の学術会議のシンポ(学術フォーラム)は非常に面白く、ジェンダーについても教養教育についても大いに参考人になった。

CSCDで同僚だった小林傳司さん、それに東大の藤垣裕子さんの教養教育に関する話はどちらもさすがだった。小林さんは主に学部生への教養教育、藤垣さんは後期(高度)教養教育の話をされたが、形式上は専門教育に属する史学概論や教職用科目などにも使えるネタをたくさんもらった。
藤垣さんが紹介した「ポジションが活動のレンジを一つのコードで規定している人=一次元的人間」(マルクーゼ)という定義と、後期教養教育を一次元的人間から「抜け出す」教育だ、という藤垣さんの話はとくに印象に残った。

小浜報告は、学生を含む日本人が、非欧米社会=人権後進国=女性の地位も低い、などといわれのない思い込みを持っっていること、実際はアジアのジェンダーは多様で、躍動的で、ダイナミックであること、それに中国のジェンダーの歴史などを概観したのち、本題として「従軍慰安婦問題」を取り上げた。学界でも有名な日本人研究者・市民による「山西省・明らかにする会」の活動と、それに対する元「慰安婦」たち、そして中国の研究者や市民の反応を通じて、日中双方の多元性と市民間の相互信頼と交流の始まりを示し、旧日本軍のあまりの行為を知って動揺する日本の学生に「日本政府を代表するより、自分を代表してしっかり態度を表明しよう」と語りかけるのだという内容は、「よい発表」(それはあちこちで聞ける)というだけでなく、久々に聞いた「カッコイイ発表」だった。
  ※日本の姓と中国の姓の違い、「男は外、女は内」のジェンダー規範は宋代から広まったが、近代中国   では性別役割分業を基盤とした「近代家族」は現在まで成立しない、ただ性=愛=結婚=生殖の四位   一体は成立したことなど、中国のジェンダー史のまとめもすっきりしていた。

その他の報告・コメントもほとんどが面白かった。
しいて残念だった点をあげれば、(1)今回初めて参加した聴衆に、高校教育に関する以前のシンポやその後の取り組みの内容があまりうまく伝えられなかったこと、(2)ジェンダーに関する大学の教育が広がっていない点について、「ジェンダー専門でない現在の大学教員には期待しても無駄で、若手に期待するしかない」ととれる発言があったこと。校舎について、気持ちはよくわかるが、ジェンダー問題に限らず再三述べてきたように、現にそういう古い大学教員が古い教科書を書き、古い入試問題を出題し、古いタイプの教員養成をしているのを放置するのは許されないのではないか。そういう教員がおこなう概論で、「自分の専門だけ、それ以外はしゃべる必要もないししゃべるべきでない」という古い考えを墨守させずに--高校教員ならそういうことは許されない。大学教員が「学問の自由」を楯にとってそういうことをし続けるのが批判を受けないようではおかしい--ジェンダーならジェンダー視点を含めた概論をすることを強制するような取り組みや仕掛けが必要だろう。

しかも、前にも書いたが現在は、かなりの教員が「なんだかわからないがジェンダーは大事らしい」と思っている。ただかれらは、どうやって勉強していいかわからない。そういうタイプの研究者はたいてい生真面目で頭が固いから、「ジェンダーのような新しい領域」を勉強するのはものすごい努力が必要だと思って(また下手に手を出すと怖い女性たちにボロクソに言われると思って)、手が出せずにいる。「いや、そんなに大変じゃないんだよ、ほらこうやればいいんだ。面白いでしょ」と持って行くことは十分可能なはずだ。






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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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