「歴史基礎」の難題

台湾に出かけたりしていたため書く暇がなかったが、6月9日に高校「地理基礎」「歴史基礎」の実験校である日本橋女学館の厚海啓子先生の報告を聞く機会があった。
昨日の歴教研月例会でも口頭で少し紹介したが、いくつか印象に残った点があった。

・中学地理が得意でなかった、わからなかったという生徒が、歴史より多い→地理は世界地誌をまんべんなく教える方針を放棄し、系統地理や課題学習を重視しているが、それがうまくいっていないと見える。
・歴史基礎は、講義は本当の骨だけにして、調べる、発表する、討論する、レポートを書くなどをたっぷりやらせている。
・その結果、世界史(B)を学ぶ意欲をもつ生徒が増えた。

そのへんはアンケートによる生徒の把握も含め感心したのだが、厚海先生も言われたように、「どの先生でも教えられる」ようにすることは簡単ではない。

そして、世界史Bの教科書と資料集を持たせて授業をした、という点にハッとさせられた。
欧米の発表・討論主体型の歴史教育でも、教科書(教師が講義するものではなく生徒が読んだり調べるもの)は分厚いという。ある程度の事実を踏まえないと議論にならない歴史の場合、どうしてもこうなるのかもしれない。

とすると、「2単位の歴史基礎だから教科書は(世界史Aや日本史Aのように)薄くする、ということができないのではないか。われわれが大学用に作ろうとしている教科書はAとBの中間ぐらいの詳しさを想定しているのだが、それだと結局、講義主体型の授業にしか適合しないかもしれない。

しかし、4単位のB科目のように厚い教科書を作ったら、それを全部暗記させようとする教師がおおぜい出てくるかもしれない。うーん、困った。

昨日の歴教研月例会でも、大手の世界史B教科書が(新指導要領にしたがって)古代・中世などの古典的時代区分を押しだした点を、「それを教えねばならない」と思っている先生が多いことが話題になった。時代区分に関する入試問題など聞いたことがないのだが、教科書に書いてあるイコール教えねばならないという先生の思い込みは、なかなか抜けそうもない。

もう1点、事件では「イギリスの近代化・工業化から初めて」近現代(アジア中心)に絞った授業をしたとのことだが、中学で通史をやっている日本史は(日本史Aがそうしているように)幕末以降だけでもいいのだが、予備知識のない世界史はやはり具合が悪いように思う。その点のすりあわせはさらに進める必要があるだろう。

台湾大学でもいろいろ面白い話を聞いてきたのだが、書く暇があるだろうか。
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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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