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ベトナム原発問題パネル

鹿児島大で開かれた東南アジア学会大会で、日本からベトナムへの原発輸出に関するパネルが開かれた。3つのパネルが並行して開かれていたので、参加者がどれだけ集まるかと思っていたが、ずいぶん来ていた。
パネルの要旨は
http://www.jsseas.org/conference/

(以下は、6月3日朝に修正・加筆しました)
私は頼まれて司会をした。古田元夫先生がコメンテーターを引き受けられたので、議論にバランスがとれたと感じた。古田先生を担ぎ出したコーディネーターは賢い。

いや、それにしても聞くだに深刻な問題だ。以下は私見だが、
・ベトナム政府の開発主義路線および国民統合政策、日本政府・財界とのもたれあいの関係は、スハルト時代のインドネシアとよく似ている。
・当時のインドネシアのように反対派を殺したり外国人研究者を簡単に入国禁止にしたりということは考えられないが、ベトナム国内での情報公開などは遅れており、一部知識人の反対運動には締め付けがある。
・スハルトのインドネシアが途中から停滞したように、ベトナムのドイモイ下での急成長も踊り場に来ており、今までと違ったしくみを作らねば、これ以上の発展は困難になるかもしれない。
・ドイモイの25年をへて、外国のベトナム研究者は、アメリカの地域研究(もともとヨーロッパの植民地主義に反対する点では東南アジアのナショナリズムと親和的だった)がある時期に東南アジアのナショナリズムと対決状態になったのに近い立場に、現代日本の地域研究者も置かれているかもしれない。

・ただし、インドネシア研究などで散々議論されたことだと思われるが、一部の報告には「上から目線による批判」のパターンが見られ、フロアからもツッコミが入った。これではまずい。「ベトナムは民主主義が欠如しているので住民に自己決定能力がない」「おまけに原発事故が起これば国内だけではすまないのだから、この問題に口を出すのは内政干渉ではなない」という発言を--気持ちはわかるし、間違いではないのだが--日本人がする資格があるかという点には、私ならかなり悩む。ベトナム当局者に反撃の余地をあたえることを心配し、権力者でないベトナム人が反発することを恐れる。
特に、「民主主義や地方自治の欠如」を単純に共産党の一党支配に帰するような安直な(中国式の国家における専制国家の伝統などは知らない)議論は、地域研究以前への逆戻りになりかねない。その他、ベトナム指導部の多様性と「主観的善意」に注意を喚起した古田先生のコメントに各報告者が反応しなかったのは、きつく言えば日本のオールド左翼の告発調を見ているようで、かなり残念だった。
・日本の原発輸出を食い止めるには、まず日本の脱原発を実現することだという古田先生他の意見は大方の賛同をえた。しかし、研究者が「双方の反対の声をつなぐ」ためになにが必要かについては、「それぞれ可能な範囲で頑張りましょう」に終わったのは物足りない。

ここから毎度の話になるのだが、この問題の背景には、日越双方の相手への理解がどちらも表面的なものにとどまっているという問題がやはりある。原発輸出批判の論陣をそこそこ張っている日本の新聞社でも、中国や韓国・北朝鮮問題への危機意識と理解の深さに比べれば、ベトナムに関する関心と理解はまだまだ浅い。そこを変えるには、日本側の場合、ベトナム研究の人と予算が少なすぎる。ベトナム側も、日本理解のレベルはまったく不十分である。このままでは、日本語も英語もできないベトナム人に、日本の運動やフクシマの状況をベトナム語で詳細・正確に伝える活動などが、長期的かつ十分に展開できるとは思えない。

韓国なら、学者はもっと政府に対して強く運動するだろう。日本の研究者も、政府や社会、また大学に対してこのことを強く主張すべきだ。


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プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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