大相撲と歴史学

弁当を食べながら、思文閣出版の読書誌『鴨東通信』に目を通す。
img861.jpg

相撲について日本支配下の台湾社会史の専門家である胎中千鶴さんが書いた「戦時期の「国技」と大相撲」、台湾大学の創立と戦後の転生についての辻本雅史さんの「台湾大学のアイデンティティ-創立記念日と傅斯年学長のこと」など、面白い記事が揃っている。
近世に見世物(今で言えばプロレスの仲間)として発展したが、明治期の近代化政策の下で「野蛮」とされて衰退産業に陥っていた相撲が、政界や皇室とつながって「伝統的な」「国技」へと華麗な変身をとげたが、その見世物・祝祭の性格は消え失せず、戦時下でも「純粋な」国技を演じられなかったし、また近代スポーツにもなりきれなかった、という胎中さんの話は、現在の大相撲を考えるにも示唆的である。

社会史や国民国家批判のかっこうのテーマである大相撲は、現在ではもちろん、グローバルヒストリーの題材にもなっている。大相撲が「国際公共財」になったと考えれば、日本人横綱の不在もとくに異常な事態とするにはあたらない。それを嘆く人が多いのは--もしハワイやモンゴルの力士でなく欧米の白人が上位を独占したら、嘆きの声は大分小さくなるのでは、という嫌味もいいたくなるが--日本が「一流の帝国主義国」でない証拠だろう。


関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセス・カウンター
あなたは
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR