お江戸に清国の使節?

時代劇の荒唐無稽なのにいちいち目くじら立ててもしかたないのだが、昨夜のCSで見たやつには吹き出して、その場でフェイスブックに書いてしまった。

ときは天保年間、アヘン戦争の数年前という設定の江戸に、密輸入のアヘンが流行し町奉行や「隠し目付け」が操作に乗り出す。密貿易を疑われる商人のところに滞在中の「清国の使節」(実は清に漂着した日本人なのだが、清の高官を名乗っている)が、空手を使ってつぎつぎ邪魔な人間を消していく。

つまりこのドラマの制作者は、鎖国時代の日本が長崎で中国と貿易をしていたのを、「中国と外交関係があった」と誤解をしているように思われる。「朝鮮通信使」の知識とごっちゃになっているのかもしれない。実は阪大教養課程の「市民のための世界史」でも、「唐代から現代までの各時期の日中関係を、国交の有無に注意しながら概観せよ」みたいな問題を何度も出題したが、そのたびに江戸時代に日中国交があったと書く答案が出てくる。「外交関係」もしくは「国交」と「貿易」は別問題だという理屈も、たとえば日本と北朝鮮は一貫して外交関係をもたないが貿易はしてきた(日中国交正常化以後の日台関係でもいい)という事実なども、全然頭に入っていないのである。
今や高校日本史では、江戸幕府にとって朝鮮は「通信の国(外交関係あり)」、中国は「通商の国(貿易だけ)」という区別を教えるところまで来ているのだが、「外交」という日本語の意味がわかっているか確認しないと、「平均値」という日本語の意味がわかっていなかった大学生のような騒ぎになってしまう。

それにしても昨夜の時代劇はツッコミどころ満載だった。
・外国の使節(高官)がお供なしで一人で来ている?
・それが商人のところに滞在している。
・日本人を平気で殺し、町方がそれをとがめられない(切り捨て御免? それとも外交官特権?)
・「隠し目付」によってお白洲に引き出されて「私をこんな目にあわせる、清国の国王怒る、日本攻めるあるよ」とか言ってる。「清国の国王」と言ったことが清側に知れたら死刑だろうが。大清皇帝陛下と言わなきゃだめなんだよ。

いや、日本史の先生方はがんばってもらわないと...

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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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