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歴史学の名著

今週のブログでは、「中国文明の至宝展」などと比べると観客動員が難しそうな大ベトナム展を盛り上げる記事をつぎつぎ書こうと思っていたのだが、先に書かねばならない材料がどんどん出てくる。「歴評」の最新号もその一つである。
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学生向けの特集という点は、「イマドキの学生に、こんな難しいことを書いてわかるかいな」という気がしないでもないが、われわれシニアが他分野の状況を知るにはとても役に立つ。

とくに現在の立場上、小川幸司先生の「歴史教育のなかの「世界史」を見つめて」は真っ先に読んだ。
現在、世の中に4つの異なる世界史があるという点から、小川論文は始まる、第一は受験の「苦役の世界史」、第二はキリスト教、国民国家、人権と民主主義など、ある普遍的価値がどう形成されてきたかを描く「普遍史」、第三は地球規模の動きや地域間の関係性に着目する「グローバル・ヒストリー」、第四が小川先生が主張する「ひとりひとりの世界史」、つまり自己-地域-日本列島-世界などの同心円状の自他認識が双方向的に作用しあい(通俗的な最初に自分、つぎに地域、だんだん広がって日本、最後に世界という一方向ではない)、たえず刷新されていく歴史であるとされる。そして、この第四の世界史に著者を導いた著作として、吉田悟郎氏の『世界史学講義』が紹介される。

グローバル・ヒストリーについて、大学の研究者がこれを「苦役の世界史」を解決する処方箋だと早合点している、もし善意で教科書に盛り込めば、今度は「苦役のグローバル・ヒストリー」が生まれるだろう、という小川先生の指摘は、大学の研究者と歴史教育者の関係を大企業と下請けのような「二重構造」にすることを、「ひとりひとりの世界史」は断固として拒絶するという発言とともに--阪大の歴教研ではもはや乗り越えられた問題だと信じたくはあるが--「拳々服膺」すべきことがらである。市民としての政治的選択を中心としたさまざまな行動の参考とすること、そして自己認識と他者認識の相互作用を通じたよりよい生き方の探求に道をひらくこと、これらこそ、歴史教育の主目的であろう。

ついでに、本号の書評で載っている山本博文ほか編『消された秀吉の真実』も面白そうだ。江戸幕府成立後の「德川史観」構築のかげでいろいろ消されたり曲げられた事実があるそうで、「家康を筆頭とする五大老」なんてのもあとからつくった話だそうだ。
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プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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