「正体不明の他人」から「尊敬する隣人」へ

今学期最初の授業は、文学部新入生向けの必修科目「文学部共通概説」
週に3コマ開いて、文学部の専任教員の半分ぐらいが1回ずつ講義をし、新入生はそのうち15回以上出席して2人の教員にレポートを出せば単位がもらえるという授業である。主な目的は文学部の全体像の把握と専修の選択だ。

後半はどんどん受講生が減るが、初回の今日は120人近く来て(新入生は総数170人ほど)、用意したプリントが足りなくなるなどいろいろ慌てさせられた。

毎度おなじみのパターンだが、自分のベトナム史研究の紹介の後、「阪大史学の挑戦」と東洋史専修のハイレベルな教育・研究を紹介して、最後は「良くも悪くも東アジアとの関係が決定的になっていく今後を考えて学問をしよう」とアピールした。

例によって西洋研究・日本研究に対する挑発的な発言などをしたのだが、コメントペーパーを見ると怒って反論するような学生はおらず、東アジアは大事だ式の優等生的なコメントが多い。しかし、例年と比べて中国・韓国などへの非難が急増するというようなことはなかった。

4月の初回だということもあり、講義では「こういう時代だからこそ大学も社会も企業も、アジアを深く理解している人材を必要としている」「そこを見据えた教育をしている阪大東洋史および史学系は、就職もこの時代にしては好調なのだ」「ただし学問が高度化し学部4年では不十分になっているので、理系同様に修士まで行くのが望ましい」といった話をかなりたっぷりしたのだが、ベトナム史に興味のないタイプの学生の多くが、そこは一生懸命聞いてくれたようだ。

自分は東洋史とは違う希望専修があるが、先生の話で東洋史学が「正体不明の他人」から「尊敬する隣人」に変わったと書いた学生がいたので、今日の講義は成功だったと思いたい。また、こういう学生向けに、東洋史関係の良質な概論や、副専攻的に利用できる授業を用意すべきいうまでもない。
あわせて、周辺諸国と日本が、お互いに「尊敬すべき隣人」になってほしいことも当然だ。

しかし中には、鋭い阪大生もいる。「先生は自分の研究にかなり自信があるようだが、その自信の根拠はどこにあるのか」という質問があった。
うーん、「あれはホラです」と言うわけにはいかないし、中心にあるのは「マイナー人生(オンリーワン志向)を貫いてきた自信」、あわせて「評論家・解説者」として自分に対する評論はそんなに大甘ではないだろうと思うこと、そんなところだろう。

もうひとつ、「東洋史はこわいところだから行ってはいけない」とサークルの先輩に言われる、といった話が毎年あるので、「それは都市伝説だ」と打ち消す話をしたら、「阪大東洋史がこわいところとは聞いたことがなかった」という学生がいた。ヤブヘビだったかな?
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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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