小谷野・與那覇論争

ツイッター上で派手に行われているようだ。
http://togetter.com/li/483884

私もちょっとだけからんでいるが、いちいちツイッターに書き込みをする能力も余裕も意欲もない。
文学・映画の素養はともかく、歴史や「支那」に関する小谷野氏の意見は、専門の「研究者」ならアホらしくて無視するだろうというものが多いが、「誠実な町の歴史屋さん」たらんとする與那覇さんはきちんと受け答えをしているので敬服する。

阪大歴教研で私が主張しているのは、広げるべき歴史の中身そのものについて、こういう粘着度での質疑や論争を辞さない姿勢が必要だということである。

いずれにしても両氏の論争が浮き彫りにすることがいくつかある。
たとえばそれは、(1)中国や韓国の存在感や圧力の拡大、(2)日本の東アジア研究の急速な進歩、の2点が揃っているにもかかわらず、與那覇さんのような少数派を別とすると、文化研究をする日本のインテリ(ディシプリンの中心を日本的な方法に置く人と西洋的な方法に置く人の両方)の間で、漢学的素養も新しい東アジア研究もひっくるめて、東アジアを理解する知的基盤(基礎教養と言ってもよい)が急速に後退していることだ。たぶん小谷野氏が宮嶋、足立といった学者の理論を文脈を含めて理解するには、ものすごい段階を踏んだ勉強を要するだろう。そして、小谷野氏の本が売れるということは、彼は孤立した例外ではないということだ。これには危機感を覚えざるをえない。

ついでにいえば、いまだに歴史学界イコール「マルクス主義」イコール単純進歩史観と思ってるのも、小谷野氏に限らないのがたいへんなところだ。相手に「左」「親中」などとレッテルを貼ればなにかを言ったことになっていると思っていることも同じ。1周どころか2周以上遅れてるよ。

あとは下らん話し。
私は小谷野氏に「クロムウェルの名前さえ知らない学生に、小乗仏教でなく上座(部)仏教だと教える」馬鹿な教授だと思われているが、そもそも拙著や阪大歴教研の活動を、「これを直接生徒に教えろと要求している」ものと勘違いをする人が多くて困る。「教員はこういうことを知った上で教えろ」(教師が知っておくべきことと、生徒に教えるべきことはイコールではない)という文脈を読む練習をしてほしい。という話より今回書くべきは、クロムウェルが21世紀の日本人の生徒・学生にとってなぜ上座(部)仏教より大事なのか、まったく理解できない。 これこそ21世紀的な愛国心を欠いた古い古い西洋かぶれじゃないだろうか。

それと、阪大に不快感をいだく小谷野氏が私を罵倒するのはともかく、東大出の小谷野氏が足立啓二氏のことを「学位を持っていない熊本大学の教員じゃないか。東大や京大には(そういう説を唱える学者が)いないのか」として信用できない低レベルの研究者のように書く点は、語るに落ちたというか、あきれて物が言えない。


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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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