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社会ダーウィニズムとポピュリズム

高校の先生や大学生に「これを歴史教育で教えないのはいかん」としょっちゅう話していることば(概念)にこの2つがある。

社会ダーウィニズム
ダーウィンの適者生存の理論を拡大解釈し、優れた人種だけが生き残る、「劣等人種」は滅亡して当然と見なした「理論」。
19世紀ヨーロッパに出現したこの思想を、東アジア各国の近代知識人は素朴かつ真剣に受容し、劣った人種・民族は滅びたり植民地にされて当然、勝った者は優れた者だ、という前提のうえで、自国の近代化を追求した。その歴史的背景として、東アジア各国が「単一の物差しで人の上下を評価する」強固な伝統をもっていたことを重視したい。その延長上に今日までつづく学歴社会がある。また、「勝った者は何をしてもよい」「負けたら何をされても仕方がない」という前提から抜けられないため「アメリカ批判はできずにアジア諸国だけを罵倒する」近年の「反自虐史観の若者たち」の存在がある。社会ダーウィニズムを教えることが必要な領域は、ナチス・ドイツのユダヤ人虐殺だけではないのだ。

ポピュリズム
実現不可能な「カッコイイ」政策や「敵」への過激な非難攻撃など、単純明快だがインチキな大衆迎合路線で国民(有権者)の支持をえようとする政治。民主主義が機能しない「衆愚政治」の一形態。
これを緊急に教えねばならないのは、紀元前アテネの没落やローマ帝国の「パンと見せ物を」、現代のラテンアメリカのことなどを理解するためには限らない。なによりも、現代日本の都市部の政治を理解するために必要なのだ。大阪府でも東京都でも名古屋市でも。

2つ並べたのは、たいていのポピュリズム政治家は、「ヒルズ族」などと同様に、「オレは勝ち組だから偉い」「勝ち組は何をしてもよい」という思想を共有しているからだ。

しかしこういう政治家が格差社会に苦しむ「負け組」から圧倒的支持をえたりするのは、既存の政党政治や教育(二大政党制が万能であるかのような教育などがその例)がうまくいっていないからだ。
たとえば「なんでもかんでも公務員や議員を減らせばいい」という低レベルな主張があたりまえになってしまうのは、「少数派や弱者の尊重」を可能にする仕組みのない民主主義は民主主義ではないという基本中の基本すら、きちんと理解されていないからだ。たいていの面で日本社会の少数派に属し、むき出しの競争社会で生きていける見込みのない私にとって、これは本当に恐ろしいことだ。

しかも5月9日付けで書いたように、日本人は臆病である。とくに異質な者を集団のなかに抱えておくことについて、異常に、恐ろしく、信じられないほど臆病である。これとポピュリズムが結びつくといかに危険か、歴史がはっきり教えている。
同じ考えの人間ばかりいくら集めても「想定外の危機」に対処できないことは福島原発で決定的に明らかになったのに、それなのに、君が代を歌わない教員を処罰するなどということに一生懸命になっている。「懐の深い」組織や国家というのは、異質な者を許容し、しかもそれが全体を崩さないように一定範囲に押さえておく智慧や柔軟性をもったものを言う。「大国」といわれる国家はみんなそうしてきたのに、日本も大国でありたいと熱望している「愛国者」のみなさんに、どうしてこんなことがわからないのだろう。ヘテロジニアスな要素を含まない「純粋培養」や「純血種」は弱い、というのも生物学のイロハじゃなかったかね?

ついでに言えば、こういう教育を受けてきた若者は、「上から与えられる一つだけの正解」をよく覚えるようにはなっても、現実社会で当たり前の「幅のある選択肢から選ばねばならない」「正解がない」などの状況には対応できない。また「他人をけ落とす」ことは上手かもしれないが、「違った論理をもつ他者を深く理解する」「相手と違った主張をしながら相手に尊重される」などは望むべくもない。そんなことでは、「愛国者」のみなさんが気にしている国際競争に勝てるわけがない。つまりこの人たちに本当の愛国心などないのだ。そんな若者を大学に送り込んでおいて、「国際競争に勝てないのは大学のせいだ、予算カット」なんて言われても困るんだけどな。



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プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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