東アジア関係学の構想

今回のシンポは池内敏さんがオーガナイズしたので、6人の報告者中で歴史学者が5人もいたのだが、主催した近現代日本文化研究センターの陣容を反映して、参加者は手伝いの院生も含め、文学や映画研究などの分野がほとんどを占め、歴史系があまり見られなかったのは残念だった。

ちなみに「東アジア関係学の構想」というテーマは、主催の日本近現代文化研究センターが4月から「アジアの中の日本文化研究センター」に改称することにちなんだものだそうだ。

ディスカッションでは、「東アジア」を「日韓(朝)中(台)だけ」でしかも「国民国家の寄せ集め」ととらえてはいけないという点で意見がおおむね一致した。ただ、地域研究とディシプリンとの関係についての議論は、東南アジアについて散々やった議論、最近の北大スラブ研の試みなどから見ると、やや素朴だったように思われる。

研究・教育交流のための言語をどうするかという点は、当然結論がでなかった。英語は必須だがそれだけではすまない。どうしても多重通訳・翻訳が必要になる。今回は発表者に合わせて初日は英語-日本語、2日目は中国語-日本語の同時通訳を使い、そのうえで中国語や韓国語の留学生によるwhispering(必要な人の横に座って耳元で通訳する)も配置したのだが、どうしても伝わらない部分はあった。報告集などはあらためて慎重にチェックすること、院生に複数言語の習得を促すだけでなくwhisperingや逐次通訳の経験を積ませることなど、交流の継続・発展のためには、いくつかの意識的な取り組みが必要だろう。

シンポでは上海の復旦大学と東大の協力などのきわめて大規模な取り組みも紹介されたが、日本近現代文化研究センターのような小規模なセンターの活動としては、院生のトレーニングという側面を含めて、いいシンポだったように思う。
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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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