企業が大学教育を妨害している

「毎日」朝刊でライフネット生命保険社長の出口治明さんという人が、大卒者採用のための「青田買い」を即刻全廃し、企業の側から学生に接触することを禁止するべきだと主張している。

高度成長と人口増を前提とした特殊な条件下では、これまでの「青田買い・終身雇用・年功序列・定年制」というワンセットの雇用慣行は合理的だった。確固たる成長モデルがあるから、労働者は名にも考えずに働けばよく、大学の勉学は二の次で、元気で意欲のある学生を早くリクルートする方が大事だった。

ところが21世紀の日本では、人口増と高度成長という2つの前提が崩れた。日本人自らが自分の頭で考えて課題解決を図るステージに入った。そうであれば大学生には徹底的に勉強させ、欧米のように大学院教育をもっと充実させて、自分の頭で自ら考え道を切り開く若者を育てなければならない。

それなのに企業は青田買いを続け、不景気の中で学生は長期の就職活動を余儀なくされて、勉学の時間を大幅に奪われている。これだけ財政が苦しいのに、次代を担う若者に期待して大学には2兆円近い血税が投入されている、その大学生の勉学時間を奪うのは、極論すれば税金泥棒だ、と出口氏の論調は手厳しい。

出口氏の会社では、新卒の定義を30歳未満のみとし、採用に当たっては難しい課題を示して字数無制限の論文を書かせるそうだ。そこまで出来ない大企業でも、卒業後に卒業証書、成績証明書、TOFELのスコアなどを提出して採用面談を受ける仕組みは、経団連あたりが音頭を取ればとくに難しくないだろうと出口氏は主張する。私は企業の採用の現場をまったく知らないが、もっともな意見に聞こえる。

そういうことができない企業は--そもそも日本の企業は、世界標準から見れば「護送船団行政」などでさんざん国に助けられ、補助金や公共事業など税金からの恩恵もたっぷり受けているところが多いのだから--税金泥棒と呼ばれても仕方ないだろう。それで大学側の教育内容に文句をつけるのはお門違いというものだ。


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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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