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新しい歴史書のつくりかた

大型科研「にんプロ」(東アジアび海域交流と日本伝統文化の形成)の成果のうち、羽田正さんを中心とした本で、難航していると聞いていた「海から見た歴史」が、ようやく出た。


遣唐使時代と近代の間で、日中・日韓などの交流について断片的にしか知られていない時代を扱うという内容が興味深いのはもちろんである。トウガラシ(日本では「唐」から来た、朝鮮半島では「倭」から来た、沖縄では「高麗」から来たとそれぞれいう)やサツマイモの、地域ごとさまざまな呼び名と由来の説明について、「どれが正しいか」と分析する(陸上の、国家の視点)のでなく、そういう多様なネーミングや観念を成立させる海域のごった煮的な性格自体に注目しようというプロローグの枕からして、読者に単なる新知識でなく発想・考え方の転換を迫っている。

この本で読むべきは、そういう「書いてある中身」だけではない。ポイントはむしろ、執筆・編集の方法にある。
日本の人文系の場合、共同研究の成果物は、共通テーマはあってもそれをあくまで参加者個々人が自分の専門と関心に引きつけて書いた、結果としてバラバラな「論集」を出しておしまい、読者はそのバラバラな成果の中から自主的に「細部に宿る神を見つけろ」、というのが普通である。「にんプロ」でも、そういう性格のより純学術的な論文集を先行して出版している(その方が簡単である)。

その点でこの本は、「あとがき」が紹介するように、責任者を決めたうえで複数人で書く、おおぜいのチェックを受けるなど理系的・欧米的なやり方を意図的にとっている。第二次大戦後のマルクス主義歴史学の一部などを除けば(また純粋な教科書を別とすれば)、きわめて斬新なやりかたである。

手前味噌ないいかたをすれば、(1)単なる知識や実証の技法でなくパラダイムを重視しそれを転換する、(2)複数人の文字通りの共同執筆は、大阪の海域アジア史研究会や歴史教育研究会で、長年にわたって主張してきたことがらである。今回の執筆陣にも、山内晋次、杉山清彦、蓮田隆志、向正樹ら「大阪育ち」や、海域アジア史研究会に「洗脳された」東京・九州・北海道その他の若手・中堅がずらりと並んでいるのを見て、(東南アジア史プロパーが少ないのが残念ではあるが)ちょっと誇らしい気分になった。



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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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