大河ドラマの「平清盛」を支持するネット

木曜の毎日新聞夕刊で面白かった記事のその2は、「月刊ネット時評」の宇野常寛「大河『平清盛』を強く支持する 制作者も体制内改革者だ」という意見である。

「清盛」は画面が汚い、物語が解りづらいという批判が多く視聴率が低いが、ネットの世界では応援の言論が盛り上がっているのだそうだ。
宇野氏によればその論点は、
(1)「清盛」は非常に工夫して丁寧に作った作品である。
(2)TVドラマは「ながら」視聴でも理解できる平易なものでなければならない、ご当地のきれいな景色を写さねばならない、などの先入観がそもそも古い。「清盛」は大河ドラマの長大な放映時間だからこそできる表現を追求し、そのポテンシャルを大きく引き出している。
(3)清盛は現代日本と同じく行き詰まった平安期のシステムに対する、体制内改革者として描かれている。本作もTVの体制内改革を図る作品である。伝統的な内容とスタイルの「梅ちゃん先生」が(作品そのものはよくできていたが)高視聴率を取り、「清盛」が低視聴率に苦しむこの現実こそが、現代日本の陥った袋小路を象徴している。
(4)視聴環境が多様化した現在、「視聴率」という基準の信頼度は大きく低下している。「誰もが同じ話題で盛り上がれるように、誰もが簡易に楽しめる娯楽を無料で放送する」という考えは、現実に多様化している視聴者に最大公約数的な「標準」をムリヤリ押しつけることになっている。それよりバラバラなものをバラバラなままに共存できる状態を模索するほうが、今日的な公共性に資する。

「水戸黄門」なら「毎度おんなじ平易なつくり」でいいのだが、国民の歴史像に強い影響を与えている大河ドラマの場合、宇野氏の意見が基本的に正しいと思う。

「簡易だが低レベルな標準を全面的に押しつけ、それ以外のものを認めない」というNHK(や民放を含むTV業界)とそっくりな状況を30年以上前に示したのが、旧国鉄である。
国鉄が民営化に追い込まれた理由はたくさんあるが、国鉄自身の責任に帰すべき部分として、103系電車、キハ28・58気動車などその種の車両を、完全に時代遅れになるまで延々と大量生産し続けたという部分があった。それと現在のTV(地上波)は実によく似ている。TVが衰退産業から抜け出したければ、改革が必要だろう。
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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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