JRよ、お前もか!

久々に鉄道の話題。

「鉄道ジャーナル」12月号の連載「鉄道技術のあり方を問う JR発足25周年を振り返って(5) 営業・サービス編」(曽根悟・工学院大学特任教授)が痛烈だ。世界に誇る日本の鉄道(この場合JR)は、ガラパゴス化しつつあり、政府も関心をもつ海外への技術輸出などこれでは無理だということだ。
 見出しを拾うと:
問題提起:
○ICカード乗車券(Suica、PASMO等)は成功したのか
○決定的に悪評のJapan Rail Pass
○公共交通の手の組み方
○列車ダイヤに見られる民鉄との格差
○仕事ぶりに見られる外国との格差
○鉄道に親しむことを可能にするサービスを
現状分析:
○日本の鉄道はガラパゴス化しつつある
○南武線の快速と民鉄のそれとの比較
今後の25年を展望する:
○鉄道旅行に無縁な家族に積極的に空席を売る営業施策に転換を
○日本の鉄道サービスをレベルアップする必要性
○昔ながらの「大量定型輸送」一本やりからの脱却法
○公共交通システムの再構築を
○良いサービスをしようとすれば車両・線路・駅・信号等との良い連係が欠かせない
○営業・サービスは国際分業の中で日本が他国から学ぶべき分野

論点は多岐にわたるが、まとめると、以下の点で必要な新しい発想を欠いているということだろう。
(1)人口密度の高い日本で大量定型輸送のノウハウ(それ自体は超高レベルである)を蓄積してきたが、そこに安住して(縛られて)IC時代に可能な「大量だが個人のニーズに応じた多様なサービスを提供する輸送」の発想。
(2)JR以外の「民鉄」や他の公共交通機関との連係の発想(そもそも他の機関について考える習慣がない)。
(3)「生まれたときから車社会で育ち、鉄道の利用法を知らない世代」を鉄道利用に導く発想
(4)外国人に利用させ日本の鉄道に好感をもたせる発想。

以下、鉄道に詳しくない方向けに解説すれば、
(1)は、新幹線をひたすら「楽しみのないビジネス列車」にしてきた点などにあらわれている。新幹線の新型列車でも前の列車と座席数を完全に揃えるなど、客の動向より管理のしやすさを優先する体質は、国鉄時代と変わっていない。「家畜運搬車」と言われた首都圏の通勤電車もひどいものだ(人口が多すぎるだけでなく、他地域を知らない首都圏の住民が私鉄も含めて文句を言わないから変わらないのだという話は、30年以上前から言われている)。
(2)は多数の会社の路線を共通カードで乗降できるようにしただけでは十分でない。欧米では一定ゾーン内は共通運賃体系が当たり前で、日本のようにJRと民鉄を乗り継いだら別々の運賃がかかるなどは失格である(これは30年以上前から言われている)。
(3)はSLを走らせたりすることが本質ではない。私は大学生になるまで、飛行機というのはどうやって切符を買いどんな手続きで登場するものか知らなかった。現在はそれと同じ意味で鉄道の利用法(たとえば搭乗法?)を知らない若者が地方を中心にゴマンといる。観光イベント(鉄道の利用法は知らなくても旅行会社に申し込めばよい)ではなく、日常の鉄道の利用法を普及し、現代の感性をもつ若者が日常的に乗ろうと思うサービスや価格を提供しなければならない。
(4)は、新幹線の車掌や駅員に英語のできる人を配置するとかいうことでは解決しない。曽根さんが欠いている話は悲惨である。国鉄時代から評判が悪かったJapan Rail PassはJRになって変わらないどころか相対的に悪くなったのだそうだ。
(ア)このネット時代に、利用する列車が(日本到着前に)事前予約できない。(イ)日本を代表する高速列車である「のぞみ」が、全く別に切符を買わない限り利用できない(いまどき「のぞみ」を使わずに東海道・山陽新幹線を旅行するのはどれだけ不便か。マニアやバックパッカー以外には耐えられないだろう)。(ウ)成田・羽田・中部国際・関空からの民鉄(海外の観光案内にも必ず出ている)が利用できないうえに、そのことがどこにも案内されていない(これも外国人にとってイヤミ以外の何物でもないだろう)。(エ)日本到着後にバウチャーから本券に引き替える場所や時間に制約がある。
日本の鉄道システムを海外に輸出しようというなら、まず外国人に良い印象を与えることが第一歩なのに、実態はこのことを「積極的に妨害することになっている」「日本の鉄道システムは、利用者の視点が決定的に欠落した、実にまずいシステムになっていることを、必要以上に見せつけてしまっている」という曽根さんの意見は悲痛にすら感じられる。これが「JRの恥、日本の恥だ」と思う役員はいないのだろうか。

民営化して25年でこれでは、「公務員はダメで民営化すればうまくいく」という説が万能でないことは明らかだ。昔、近代化がうまくいかないとなんでも「封建遺制」と説明したのと同じように、「それは国鉄時代の巨大な負の遺産が一層しきれていないせいだ」という反論が出るだろうが、ビジネスの世界で25年というのはとてつもなく長い時間ではないのか。高速道路と空港を優遇する国の政策や、緩急結合を考えずに造ってしまった国鉄時代の線路配置などはともかく、25年もあってこの記事のようなソフト面での改革ができないのは、経営者が無能かそもそも分割民営化の仕組みが間違っているかのどちらかだろう。

しかし「JRグループ」を「国立大学」とか「歴史学界」に置きかえても同じことが言えそうでこわい。
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プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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