何度言ったらわかる? ディエムじゃない!

私の名前でgoogle検索をしたら、東南アジア史の入試問題を論評した「東南アジア史 誤解と正解」
http://www.let.osaka-u.ac.jp/toyosi/main/seminar/2006/momoki_honbun.pdfへのコメントがまた上位に来ている。前に紹介したよように基本はいいブログなのだが、

今日の主題は、関連して見つけたひどいサイト。こちらは例の「教えて」の質問に答えるページで、
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/4524988.html
上記「誤解と正解」を引いて、「ゴ・ディン・ディエム政権」は「ゴ政権」でなく「ディエム政権」と呼ぶべきであるらしい、と解説をしている。「ディエムという表記は明確な間違いだ、ジエム(またはズィエム)政権に直さねばいけない」と私が書いた、その解説を引いてである(間違いの理由もベトナム語の発音を示して解説してあるのだが)。「現地語の専門家が書いていようが書いていまいが、山川教科書の表記は正しい」という前提で書いているようだ。ベトナムが馬鹿にされてるようで、朝から不愉快だ。

※皆さん、山川教科書(詳説世界史)はすべての部分にプロの目が行き届いている、なんて思ってないでしょうね。現地読み主義にしてこれだけ関連言語の数を増やしてしまったら、これまでの教科書編集体制では現地読みの完全チェックなど不可能である。帝国書院や東京書籍だって、山川よりましだろうが完全ではない。私は山川出版社にもお世話になっているので悪口を言うつもりではなく、客観的事実を言っているのだ。

もっと完全なチェック体制をしいてほしかったら、進学校の先生たちは、文学部や外国語学部志望の生徒たちが「メジャーな」西洋研究(それもほとんど米英仏独ばかり)か「無難な」日本研究ばかりでなく、絶望的なまでの専門家不足に苦しむその他の地域の研究に向かうように、強い指導をしてほしい。とにかく(学術研究だけでなくビジネスでもなんでも)欧米・日本・中国以外の専門家が少なすぎて、社会的に必要な仕事がとてもこなしきれないのである。こんなことでは日本は滅びる。

なお山川詳説世界史の東南アジア記述の問題点については、
http://www.h6.dion.ne.jp/~kawan/report/momoki.mht
もご覧いただきたい(現在は修正されている箇所もあり、次の改訂では大幅に改善される予定と聞くが)。

なお、上のトンデモ解説のもとの質問は実はカタカナが正しいかどうかではなく、「ゴ・ディン・ディエム」や「アジア・アフリカ会議」の表記でナカグロ点か二重ダーシか一重ダーシかそれがよいか、という質問である。

入試はこういうところで得点の優劣をつけるものではない、ということを先生たちは頼むから教えてほしい。それは世界史の問題でなく、外来語を書くときの常識の範囲(「範囲」であって、唯一絶対の方法はない)に収まっていればよい、という国語教育の問題である。入試でそういうところをきびしく採点される、というのは半分以上「幻影におびえる」もので実態はない。

ちなみに、大学入試出題者や入社試験の出題者がよく使うのは、朝日新聞の「用語・用字の手引き」だと聞く。それが山川教科書の表記法とあんまり一致してないことは、高校の先生でもご存じじゃないだろうか。昨日の朝日新聞はちらっとしか見なかったが、山川式のウサマ=ビン=ラディン殺害、という表記ではなかったように思う。
そこで先生、あなたは生徒に「山川式と朝日新聞式と両方完全に覚えろ」と指導しますか? あほらし。
世の中の多くのことがそうであるように、受験勉強も細かいところを完璧に準備するのは不可能で、「これで外れたら出題・採点者との相性が悪かったとあきらめるしかない」部分がたくさんある世界である。そういう全体像を理解したうえで努力するほうが、絶対に成果が上がるはずだ。法律でも「あらゆる犯罪や紛争を事前に想定してすべてに対処できる法律をつくることは不可能だ」と、大昔の教養課程の法学概論で習った覚えがある。

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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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