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タンロン・ワークショップ

ハノイ3日目。今回の訪越の目的であるタンロン遺跡に関するワークショップが、ホアンジエウ9番地のタンロン保存センターで開かれた。1月に考古学中心のワークショップをしたのに対し、今回は歴史学中心である。日本側からは私と八尾さん、蓮田さんのほか、上野・井上両先生、東文研の友田さんほかが参加した。

タンロンセンターの構内に掲げてある保存プラン
P1080321.jpg

午前のテーマはタンロン中心部で、最初は考古学院チームによる、敬天殿(黎朝以降の正殿)周囲と端門(その南方の城門)内側の発掘状況の報告。タンロン遺跡が注目されるきっかけとなった「端門のすぐ内側(敬天殿の真正面)から出た李朝の道の遺構」(これにより、敬天殿の位置に李陳時代も一貫して正殿があったという理解が広がった)が、実は塀の遺構だという上野先生の指摘ともからんで行われている発掘なのだが、黎朝より下の層の詳細はまだこれからのようだ。

次にグエン・クアン・ゴック先生がタンロン「禁城」(宮殿域)について報告し、禁城内にも多くの塀や壁があることに注意をうながした。また李末(1203年)に「それまでの寝殿の西」に建造された「新宮」(1214年の内乱でおそらく破壊)を詳しく検討した。つぎにファン・フイ・レー先生が、正式発表ではないと断りながら、ホアン・ホア・タム通り(黎朝皇城の西北部に当たる)の城壁遺構と、ホアンジエウ18番遺跡E区の八角形建物について論じた。後者が李初の聴政の場である長春殿に当たるのではないか(=李朝前期の「禁城」の南北軸は、敬天殿より西側のホアンジエウ18番遺跡の建築群を中心にしたものではなかったか)という仮説は興味深かった。ただしその場合、同遺跡で見つかっている六角形建物や「竜瑞太平4年(1057)」の年号入りレンガなどが示唆する、李聖宗期(1054-72)の文献との符合(「大内」で六角形、八角形などの建物を含む大規模な建築事業をおこなっている。その背景はおそらく、去年の私の本に書いたのだが、聖宗が新しい権力を樹立しようとしたことにある)をどう理解するかという問題が出てくる。

昼食をはさんで午後は、タンロンの東アジア・東南アジア都城との比較をテーマに、私とファム・レー・フイさん、それに上野先生が報告。泥縄で準備した私の報告は、おもに中国、一部で日本・朝鮮半島・東南アジア諸国などの都城との比較をするうえでどんな問題に注目すべきかを整理したうえで、李朝のタンロンが隋唐で確立した一般モデルに従っている点、より古い魏晋南北朝のモデルに従っている点などをいくつかあげた。つぎのフイさんが詳しく述べた唐代洛陽の影響以外に、南朝の建康の影響もかなり考えられることを指摘しておいた。私の発表中に激しい雷雨になったのは、「ホーおじさんのお怒り」かな?

開封・洛陽の宮殿・城門の名称・位置や機能を細かく検討し、唐代以降の洛陽が李初のタンロンに影響していることを論じたフイさんの報告は圧巻だった。タンロンにも建都当初に作られている「五鳳星楼」が宮域の南の門であることの指摘にはとくに感心した。私の報告で「李朝のタンロンには都城全体の中軸線がない」といったが、「城外離方(南方)」に同時期に築いた勝厳寺を結ぶ線が、都城の南北の軸線だと見ていいだろう(東西の軸線も考えるべきだという点は変わらないが)。私が言っただけでは反発を買いそうな「中国の影響」を、フイさんが文句の余地にない具体的なかたちで述べてくれた点は大きい。また、ゴック先生・レー先生と3人とも、史料をしっかり引いた具体的かつ視野の広い報告だったので、歴史班の役割を示せたと思う。

上野先生は太廟、社稷壇、南郊壇の存在しない日本の都城と、存在する各国の都城の違いに関する問題提起。前にこのブログで紹介した井上智勝さんと共通する問題意識だ。

私と上野先生は、その夜の飛行機で帰国。疲れたが面白かった。
続きは11月のベトナム学国際会議でやる予定である。



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プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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