「市民のたjめの世界史」期末試験問題

「市民のための世界史III」(新入生向け)のほうの期末試験問題である。
前週に「日中関係」「ヨーロッパ諸国の世界進出」について出題すると予告しておいて、当日は「教科書・プリント・ノート類の持ち込み可」で試験をした。易しい問題ではないが、こういう大きなくくり方で考察や議論ができなければ、外交、ビジネスやマスコミなどどの世界でも「世界を考える」「世界とつきあう」ことはできない。

以下の2つの課題に両方とも答えよ。
I.7世紀初めから20世紀末までの日中関係の歴史のうち、①7~8世紀、②14世紀末~16世紀はじめ、③16世紀なかば~19世紀なかば、④19世紀後半~1945年、⑤1945年以後現在までの5つの時期について、簡単に説明せよ。それぞれの時期について、まず中国と日本との外交関係はあったかなかったかを書き、次に外交関係があった場合には対等な関係だったかそれとも非対等な関係だったか、対立・戦争があった場合にはどんな対立・戦争だったか、経済・文化面ではどんな交流がおこなわれたかなどに注意しながら書くこと。②③の時期の「日本」については琉球王国、④⑤の時期の「中国」では台湾の立場についても書くこと。
 (注意)
1.正確な年代が必要なのは④⑤の時代だけで、それ以前は「唐王朝が」「室町時代に」など政権や時代の名前を書くか、それでは不十分な場合でも「○世紀に~」「△世紀末に...」のように世紀を示せば十分である。
2.「外交関係」の有無とはどういう意味か、よく考えて答案を書くこと。現在の日本と北朝鮮との間には外交関係がない(貿易はしているし、ときどき「外交交渉」もおこなわれるが)。また日本と台湾の経済・文化交流はとてもさかんだが、これも正式の外交関係はない(日本政府は「台湾は中国の一部」という中国政府の主張を認めているので)。これに対し、冷戦時代の日本とモンゴル(当時はソ連側)は貿易も交流もきわめて少なかったが、外交関係はあった。

II.ヨーロッパの膨張と世界支配の過程について、①16~17世紀、②18世紀、③19世紀、④19世紀末~20世紀前半の4つの段階に分けて説明せよ。それぞれの段階について、ヨーロッパ側の主要な国家(③④の段階ではアメリカ「合州国」も含めること)、対外進出の対象となった主な地域、そこでの現地側との力関係、ヨーロッパ側の進出の目的や実現したことなどを、人・物・カネの流れに注意しながら書くこと。

Iは毎年やっている問題だが、今年は親切で(注意)をつけた。IIは阪大文学部の入試の過去問を加工したものである。答えはプリントの当該部分を見ればだいたい書いてあるのだが、教科書を主に見てしまうと(そうする学生はたいてい、教科書の組み立てが頭に入っていないので)時間ばかりかかってうまくまとめられなくなる。

Iでは注意書きをつけてもいろいろ間違いが出る。パターンとして「何世紀」でものを考えられない学生が多い。たぶん16世紀イコール1600年代と考えるような学生がいるし(初回の授業で「世紀」の意味は確認したのだが、そんなことは覚えていないのだろう)、他方では鎌倉幕府や元朝は何世紀だったかうまく思い出せない(考えられない)学生が少なくない。ピンポイントの年代暗記ばかりで世紀単位での把握をしない受験勉強のやり方に問題があるだろう。
もうひとつは、注意書きがあっても「外交関係」「国交」などの概念がつかめない学生がかなりいる。16世紀なかば~19世紀なかばの日中間では、その前半期の大規模な貿易関係を教わるので、「外交関係あり」としてしまう。逆に19世紀後半~1945年の時期は、日本の侵略や戦争のイメージから、「外交関係なし」と即断する。

なかには法学部で「外交関係イコール相互の国家承認、大使館の設置」などの近代的定義を丸覚えしてしまって、7~8世紀を「外交関係なし」とする答案もあった。法学部や経済学部にはこういう、近代社会(それも先進国の)だけに当てはまる定義や理論を普遍的なものとして覚えてしまうケースが少なくない、という注意点を思い出させられた。それでは歴史が理解できない以上に発展途上国とつきあえないので、しっかり指導する必要がある。
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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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