アジア太平洋戦争の教え方(つづき)

・大戦の前提としての世界恐慌と諸国の対応、日中15年戦争などの話は当然する。「全体主義」がそれぞれの国内では熱烈に支持されたこと、その一因としてかなりの高福祉を実現したことなどはかならず話す。
「太平洋戦争」に関する2つの問題を強調する。第一は「真珠湾攻撃で始まった」という入試問題などが平気で出題される背景にある「アメリカ中心史観」(実際は英領マレーのコタバルへの奇襲攻撃が先だが、「太平洋戦争」ならそれは真珠湾が最初でしょう)、第二は通常使われる「大東亜戦争」と「太平洋戦争」という呼称がどちらも戦争の実像を正しく反映しないこと(どちらもアジアとそのナショナリズムを軽視している点で共通する)。
・戦争の経過については、軍事技術や戦争の形態の面でのこの戦争の特質、科学技術や戦争指導の問題などを含めながら解説する。
・日本がなぜ東南アジアで人気失墜したかについて、戦争犯罪だけでなく経済面、度しがたい日本式の押しつけなどの問題を総合的にとらえるさせるよう配慮する。また「二股かける」など東南アジア側のしたたかな動き(とくに日本敗戦の前後)を紹介し、「自力で独立など出来ない無力な東南アジア(を日本が助けてやった)」という蔑視を許さないようにする。
・日本の敗戦(終戦)については、「近代戦争というのは戦闘の終結イコール戦争の終了ではない」ことを教える。具体的には(1)「8月15日で終戦」というのは日本国内の理屈でしかないこと(連合国向けには8月14日と9月2日の方が大事)、(2)戦争状態の完全な終結はサンフランシスコ講和条約によること(そこで条約を結ばなかった相手が、北朝鮮も含めいろいろあった)、(3)当初の理想主義的改革から「反共の砦」への変化、それを受け入れる代償としての軽い賠償など、占領下で日本の道筋が大きく変わったこと、(4)連合国側の植民地をどうするかなどヤルタ・ポツダムでも明確に決められなかった問題や、連合国による分割占領が冷戦にともなって国家分裂に帰結した例など、戦後処理の問題でアジアが苦しむこと、など大事なことがたくさんある。

それにしてもアジア太平洋戦争における政府・軍の中枢部や指揮官たちのの無能・無責任はひどい(有能だったら戦争に勝ったとかそういう話ではないが)。
現在の日本のリーダーたちがそれとあまりにそっくりなことを、リーダーもフォロワーも気づいてないとしたら、それは歴史教育の敗北だ。このままではミッドウェーの敗北やガダルカナルの敗北が、戦艦大和の犬死にが、繰り返されるのは明らかだ。
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No title

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

No title

さっそくのコメントありがとうございます。
「日本が正しかったかどうか」を論じる前提として、このぐらいの教え方(市民の議論)が当たり前になってくれるといいのだが、と思っています。
プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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