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ジェンダー史に関心をもつ理由

今日のCSCD授業「歴史のデザイン」は、グループ発表の2組目でジェンダー史がテーマ。
・山川日本史教科書の記述の抜き出し
・日本中世のジェンダーについて「教科書を書いてみる」(日本史リブレットの「中世の家と女性」を参考にして)
などをベースに(プリントで配り、詳しい説明は省略)、高校歴史教育にジェンダー史を導入する必要性と方法(ジェンダーそのものとして扱うか他の記述の中でふれるか、本文かコラムかなど)についてのディスカッションとプレゼンを主におこなった。

担当者・参加者の発見は、日本史教科書には財産相続や女子労働から服飾まで、ジェンダーに関する記述がけっこうふんだんに盛り込まれていること(にもかかわらず、学習者もたぶん教員も、それを意識せずに教科書を使用している)。
これに限らず、近年の教科書にはわれわれ研究者が見て「にやっと」するような、研究に直結した記述が少なくない。
「教科書を書いてみる」も、ウジからイエへの移行などをきちんと踏まえて書けていた。

ディスカッションでは、高校時代に歴史の教科書を「男性の視点」などと特に意識することはなかった、という声も出た。正直なところだろう。ここから、性教育と共通の「寝た子を起こすな」論も導きうる。

報告者(男2、女1)の場合はそれぞれ、歴史の授業ではないが、スポーツ一筋の青春、男子校や女子校の生徒としての経験などが、少なくとも大学入学後に、「男らしさ」「女らしさ」の規範などに関する問題意識につながっていったそうで、意識されなくても厳然と存在する性的規範を相対化するために歴史でジェンダーを扱うことに意味があるという立場をきちんと話していた。
院生1名、学部生2名なのだが、歴教研の院生報告にすごくプレッシャーがかかる優秀な発表だった。

いずれにせよ、現代日本の歴史教育では3つの理由で、ジェンダーにふれなければいけないはずである。
1.現代世界の章で、ジェンダーが(環境問題などと同様に)国連をはじめとする国際社会の新しい共通課題になったことを書くべきである。
2.日本などの女性君主の歴史を理解させ、現代日本で女性(または女系)天皇を認めるかどうかの問題を考える材料を提供すべきである。
3.日本・東アジアの少子高齢化の背景を理解させ、今後とるべき道を考える材料にさせるべきである。
2・3(どちらも「ジェンダー」という言葉は必要ないが)とも、日本型のイエ、東アジア儒教圏などの歴史を理解しないことには、まともな判断のしようがない。

ちなみに、21世紀に日本の「伝統的」家族道徳を守ることで男系天皇制を守り少子高齢化も防ごうなんて言っている連中の「愛国心」というのは、「売国心」の間違いだろう。虚構の「伝統」を振りかざして、わざわざ天皇制を危機に追い込み、少子高齢化を促進しようというのだから。ほんとうの「日本家族の伝統」を活かしたい者は、もっとまともなジェンダー史や家族史を勉強せよ。
*明治から戦後にかけて日本の人口が急増したのは、なにも「伝統的家族形態」のせいではない。近代化にともなって一般的におこる「人口転換」(多産多死から多産少死、さらに少産少死への変化の過程での人口増)による。
*現在の先進国で少子化が過度に急速な国は東アジア儒教圏に集中している。ここは家事・育児や老人の扶養・介護の社会化、婚外子の支援などへの抵抗が異常に強く、家族内の女性に負担が集中する構造を共有する(しかも中国なら拡大家族や親族に頼る方法が多用できるが、日本は近世から突出した核家族形態を取ってきたので、地域コミュニティにも頼れない現在の条件下ではとてもやっていけない)。逆に男女の結びつきをルーズ化し、家事・育児や老人の世話を積極的に社会化したヨーロッパとくにフランスでは、少子化を食い止めることにかなり成功している。
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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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