古事記完成1300年

毎日新聞の千田稔さんのインタビュー記事で知った。
古事記が権力闘争の産物であること、神話は史実でないことなどを前提としたうえで、千田さんはみんなにその豊かな神話を読んでほしいと訴える。
「日本人はヨーロッパ文化への憧れ、信仰が強すぎる。日本の神話を知らずにギリシャやローマ神話を知っている人がインテリだと言われるのはどう考えてもおかしい」というくだりは、まことにもっともである。

「日本の神話には、中国や朝鮮の神話の影響を受け、混ぜ合わせて成立したと考えられるものが多い...その意味で神話は国際性があるとも言える。「神話=国粋主義」という批判はあたらない」という指摘もしている。
国粋主義アレルギーから日本神話そのものを無視する態度は、そろそろ卒業すべきだろう。あげくに西洋神話を美化したり、「日本の後進性の根源として」アジアの神話を無視するなどの態度は、言語道断である。いまだに神話を国粋主義的に利用する勢力があることは、日本神話に目をつぶることを正当化する理由にはならない。

ちなみに、昨日の「歴史学方法論講義」(史学概論)や英語ゼミで取り上げた内容にかかわるのだが、現在の歴史学の水準からすれば、
(1)政治的作為と無縁な「純粋な民衆の神話(民話)」というものはありえない。程度の差はあるが、あらゆる文化的行為がそれぞれの政治性をもつ。
(2)他方、時代を超えた純粋で本質的な国民性・民族性などというものは(信じるのは自由だが)学問的には証明できないから、神話や民話をいくら強調しても、「日本人本来の心」を教えることになどならない。
(3)古代日本のような大文明の周辺諸国の「独自性」は、その文化(たとえば神話)を構成する内容や要素にあるのではない(周辺のどことも共通しないものなどありえない)。独自なのは、それらの内容や要素を選択し組み立てるやりかたである。その「やりかたの独自性」も、大文明から取り入れた枠組みや要素、大文明への対抗という環境がなければ、自力と自発性だけによって発揮することはできない。大文明の枠組や要素が主体的・選択的に取り入れられ換骨奪胎されていることは当たり前であって、それによって「大文明なしに自己形成ができなかった」ことを否定する理屈にはならない。

こういう考えに立脚すれば、「日本神話を教えれば即、右翼を利することになる」のではないことがわかるだろう。
「難しすぎて、そんな理屈はふつうの生徒(学生)に教えられない」?
またいつもの逃げを。それは生徒でなくあなた自身が、そういう理屈を受け付けないことを自白しているだけです。





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毎日新聞の千田稔さんのインタビュー記事で知った。古事記が権力闘争の産物であること、神話は史実でないことなどを前提としたうえで、千田さんはみんなにその豊かな神話を読んでほしいと訴える。「日本人はヨーロッパ文化への憧れ、信仰が強すぎる。日本の神話を知らずに...

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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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