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歴史のなかの貨幣

歴教研ブログに院生の多賀良寛君が「歴史のなかの貨幣」という記事を書いている。
http://rekikyo.blog.fc2.com/

古典的な「市場経済(商品経済)の発達の反映としての貨幣」とは違った、いろいろな貨幣の機能や役割、形態は、とても面白いのだが、歴史教育(銀の話は完全にメジャーになった)で上手に教えるのは簡単ではない。

「一国一貨幣」が近代の産物であること、「秤量貨幣」と「計数貨幣」の違いなどは多賀君がわかりやすく書いているが、ほかにもいくつか整理しておかないといけないことがらがある。

たとえば貨幣には複数の役割がある。「交換手段」はそのひとつに過ぎない。
・価値尺度(いろいろな物やサービスの価値を計る/比べる/表示する尺度ないし単位→貨幣の実物は必ずしも必要ない)
・蓄蔵手段(「預金」や「株券」のない時代に富を保蔵しておく手段→金属貨幣の実物が必要)
はそれぞれ別の機能であり、1つの貨幣がすべてを兼ね備えるとは限らない。場合によって複数の貨幣が別々の機能を分担することがあり、絹が価値尺度や交換手段になるなど、金属や紙幣以外の物体が貨幣の役割を果たすこともある。
貨幣の役割としてほかに、権力の象徴(多賀君が研究しているベトナムの阮朝は、タイソン朝が発行した銅銭の使用をきびしく禁止する)、納税や国家による支払いの手段、まじないの道具などというのもある。

同じ「交換手段」でも近代以前には、ローカルな地域内の取引(たいてい少額)と遠隔地取引(巨額の場合が多い)や貨幣価値の基準の設定とで、別の貨幣を使うのが普通だった。ローカルな取引用は地域内部で信用があれば「文字のない銅銭」とか極端にいえば「木片」でもなんでもいいのに対し、遠隔地取引や基準設定は、前近代には「帝国の信用」(中国銅銭)か、貴金属の実物としての価値(銀や金)がなければならないのが普通だった。

金属は素材そのものが商品として価値をもつ。そこで「秤量貨幣」が一般である社会の場合、金や銀が使われていても、それは貨幣なのか、むしろ他の商品と物々交換されている商品の一種なのかがわからない場合がある。近世中国への銀の大量流入についても、両方の見解がある。

一番複雑なのは貴金属でない銅を材料にした銭である。それは銀のように素材価値そのもので流通するのではないが、だからといって紙幣のように信用だけで流通しているのではない。おまけに銅は、工芸品や大砲など他の品物の材料にもなる。そのことが一因となって、中華世界では銅銭および貨幣一般が、しばしば不思議な動きをする。足立啓治、宮沢知之、なかんずく黒田明伸など、日本人研究者が世界の先頭を行く研究をおこなった分野である。
次の機会に、多賀君に銅銭の不思議さを紹介してもらおう。



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プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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