スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「市民のための世界史」第2回小テスト

教養課程「市民ための世界史III」はほぼ予定通り進んでいるが、高度教養科目「市民のための世界史S」のほうは、ディスカッションを少しはさせようとしているところに活発な質問も出て、なかなか進まない。
まあ、こちらは全部べったり講義する必要はないはずだ。

第2回小テストの課題(どちらの授業も同じ)は以下のとおり。
世界史上の古代帝国をひとつ選び、その民衆(帝国のどの部分のどんな民衆かも考えよ)にとって、帝国の全盛期が必ずしも一番幸せな時代でなかったことを、教科書や講義内容から例をあげて説明せよ。

「市民のための世界史S」では解答を書かせる前に何人かの意見を聞き、「~III」の方では以下の2つの点を説明した。
1.ギリシアのポリスなどは、一般には「古代帝国」と呼ばない。ただし「これこれの角度から見ればそれも立派な帝国だ」という立論をしてかまわない ← これを言わないと、なにも考えずにアテネとか、ギリシア以外でも小国のことを書く学生がかならずいる。歴史だけではないのだが、概念に注意する訓練ができていない学生はよくいる。

2.「帝国の全盛期にも幸せでない民衆」を探すのに着目する点として、
(1)被征服者の立場
(2)マイノリティ(民族的、宗教的...)や権利をもたない人々
(3)「全盛期」をつくった戦争や政策の光と影
アッシリアでは(1)、ローマ帝国では(2)と(3)、前漢(武帝時代)では(3)などが教科書にも書いてある。

(1)(2)は学生にもすぐ理解できるのだが、(3)は「一将功成りて万骨枯る」なんていう言葉は知らないし、戦争には金がかかり勝っても必ずペイするとは限らないなどとは考えたことのない学生、戦争といえば将軍や兵士(職業軍人??)しかイメージせず動員される農民の負担が想像できない学生には、ていねいな説明が必要であろう。
もちろんそれは、「困窮した庶民(ローマなら「無産市民」)の問題」と「それを巧妙に組織下に入れるポピュリスト政治家や富豪」「庶民の困窮を解決するための対外戦争」などのテーマが、まったくもって現代の問題だからである。
※なお、前近代の民衆にとって、租税(物や金で収める)より労役の負担が重い場合が多かったことは、明示的に説明しておくべきである。それがイメージできないと、王安石の募役法や14世紀以後のヨーロッパでの金納地代への移行は、なんの意味かわからない単なる丸暗記になっています。

「世界史III」の方は、唐宋変革まで話した。唐の衰退の理由は3つあげることにしている。
1)北朝以来協力してきた中央ユーラシア系住民と漢族の対立
2)精密すぎる諸制度の機能不全
3)地方の社会・経済の発展

1)は、中華帝国が漢民族だけの公共財ではないことを説明してあれば、まあまあ理解してくれるが、2)3)はややていねいな説明が必要である。
たとえば法学部や経済学部の学生、そこに進学する生徒にとって、2)は大事であろう。
3)は、ムガル帝国の「衰退」なども同じパターンだが、国家や王朝が衰えるということは単純にその国や王朝がもっている力の絶対値が衰えたのだと考えがちな学生に、「社会が発展したからこそ(それを統制できない古い仕組みの)国家・王朝が衰える」というパターンを理解させねばいけないのである。

こういうふうに、それぞれの事象を通じて「どんな説明や考え方を一般化・抽象化したかたちで理解させるか」という点での整理・考察の不足が、高校では「言葉を覚えさせるだけで説明しない授業」、大学では「個別実証研究だけで歴史像の組み立て方を教えない授業」の背景にある。
※蛇足だがここでいう「一般化・抽象化」は、「すべての歴史事象は一回限りの個性的なものである」という話とは、別に矛盾しない。前に紹介した遅塚忠躬さんの「史学概論」にもそのへんかていねいに書いてあったはずだ。


関連記事
スポンサーサイト

trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめtyaiました【「市民のための世界史」第2回小テスト】

教養課程「市民ための世界史III」はほぼ予定通り進んでいるが、高度教養科目「市民のための世界史S」のほうは、ディスカッションを少しはさせようとしているところに活発な質問も出て、なかなか進まない。まあ、こちらは全部べったり講義する必要はないはずだ。第2回小テ?...

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセス・カウンター
あなたは
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。