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「読んではいけない」マクニールの世界史

帰りの機内で文庫版のマクニール「世界史」上巻(1500年まで)をぱらぱら読んだ。
最近の世界史ブームの中の1冊として新聞などでも取り上げられており、梅田の紀伊国屋でも与那覇さんの「中国化する日本」などと並べて売られていた。

もともと10巻本の「世界史教材」とセットで出された本だという。詳しい教材集と、その脈絡や背景がわかるような簡明な世界史との取り合わせというのは、いいやり方だろう。が、1918年生まれの著書が64年に書いた内容は、その後99年までに3度の改訂をおこなったとはいえ、21世紀の今となっては、読むにたえない。
これは与那覇さんの本と並べて売るべき本ではない。

大文明・高文化中心主義を明示しそれを摂取しない集団を「蛮族」と言い切る神経。ヨーロッパ中心主義。遊牧民や東南アジアへの蔑視。言い出せばきりがない。

ただし、そのストーリーや語り口は日本でみんなが親しんできたY社の世界史教科書とは共通点がきわめて多いように思われる。だから、日本のある年代以上の読者の多くは、この本を「安心して」読めるのかもしれない。
が、それではだめだ。みんながこういう歴史観をもったままでは、21世紀の世界はたいへんなことになる。

与那覇さんの本も、恥ずかしながら読み終えたのはソウル行きの機内だが、実に面白い。
日本の外交は、ごく少数の相手しか考えなくていい場合はけっこう上手だが相手が多数になると悲惨なことになる、という指摘などは外交だけでなくすべてについていえることだろう。単一の枠組み・目標のもとでひたすら刻苦勉励する日本人。

ただ中国の仕組みが宋代に出来上がってしまったというのは、「日本が1000年遅れていること」を強調する戦略としては理解できる(つまり本書の中国は、日本を論じるための道具であって現実の中国そのものではない)。が、事実としては問題が多い。モデルははっきり出てきたといっても、それが中国社会を全面的に支配したのは清代のことだろう。またモンゴル時代の屈折をどう評価するかも難しい。これらの点を、向正樹、田口宏二朗、杉山清彦といった阪大東洋史の論客と議論させてみたい気がする。







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まとめtyaiました【「読んではいけない」マクニールの世界史】

帰りの機内で文庫版のマクニール「世界史」上巻(1500年まで)をぱらぱら読んだ。最近の世界史ブームの中の1冊として新聞などでも取り上げられており、梅田の紀伊国屋でも与那覇さんの「中国化する日本」など史教材」とセットで出された本だという。詳しい教材集と、その?...

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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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