「市民のための世界史」第1回に話したこと

CSCD科目「市民のための世界史S」は、事情があって早く終わらせねばならなかったため途中までにしたが、教養課程「市民のための世界史III」では以下のような話をした。

I 授業のねらい、対象学生、成績評価法などシラバスに書いたことをプリントで配布し確認。
以下の授業計画もあらためて提示。
1.各地域の自然と住民  2.古代文明・古代帝国と地域世界の形成
3.地域世界の再編  4.海陸の交流とモンゴル帝国  5.大航海時代(1)
6.大航海時代(2) 7.アジア伝統社会の成熟と「ヨーロッパの奇跡」  8.西洋近代社会と「ウエスタンインパクト」 9.帝国主義時代とナショナリズム  10.第二次世界大戦とアジア太平洋戦争 11. 冷戦と民族独立  12. ベトナム戦争と世界の多極化  13. 現代世界の光と影

II 歴史学の現況とこれまでの世界史教育の問題点、歴史学の学としての性格および歴史を学ぶ意義・効用などについて、以前に教養課程で行われた歴史についてのリレー講義のイントロ用(1コマ分)に作ったパワポの一部を使って、さらっと説明。
(1)新しい歴史学の躍動、日本の歴史学の緻密さと幅広さ。
(2)19世紀的な国民国家史観や弱肉強食のエリート主義、第二次大戦後の観念的平和主義、それらに共通するアジア軽視(日本特殊論と西洋中心史観)などがもたらしている制度疲労と歴史離れ
    *2030年の世界主要国・地域別のGDP比率についてのアンガス・マディスンの推計も紹介。
(3)実験科学ではないが恣意的な解釈ゲームではなく、応用科学とも共通点をもつ歴史学の性質
(4)歴史を学ぶ6つの意義・効用
  (あ)現在の社会は歴史の積み重ねの上に成り立ったものだから、歴史(とくに近現代史)を学ぶことで、現在を理解し未来を展望する力が身に付く。[歴史の変化する面がこれを要求する]
  (い)過去の人類のさまざまな成功や失敗の教訓(古代史でもかまわない)に学ぶことで、よりよい生き方、よりよい社会が可能になる。[歴史の変わらぬ面、繰り返す面がこれを要求する]
  (う)「過去という他者」(外国史なら二重の意味で他者)を学ぶことで、他者理解や異文化コミュニケーションの能力が鍛えられる。
  (え)複数の資料を批判的に読んで事実を確定する訓練は、情報リテラシーの涵養につながる。
  (お)「時代」や「社会」などを研究することで、「長い目で見る」訓練、総合的・巨視的な視野が身に付く。
  (か)「事実は小説より奇なり」→良質な娯楽や知的興奮の材料となる。
*(あ)(い)(か)は直接に歴史そのものを知ること、(う)(え)(お)はそこから身につく考え方に意味がある。

III プリントを使って、歴史の始まりについて中学校のおさらいをし(実例をあげて説明するのではない)、用語・概念を確認する。
(1)人類の誕生
・最初の人類はアフリカで出現(アウストラロピテクス)
・猿人-原人-旧人-新人 われわれはホモ・サピエンス・サピエンス
・狩猟・漁撈・採集から農耕・牧畜へ(最終氷期後の人口増と気候激変への対応として)
・石器にくわえて、やがて土器も使用
(2)文明の誕生と国家の形成
・金属器(青銅器→鉄器。生産、生活、軍事などあらやる技術を発達させる)、文字、宗教、都市、貨幣などの発生→文明の誕生
・集団(共同体)の拡大/人が人を支配する→国家の形成
(3)術語(専門用語ないし業界用語)
・先史時代と歴史時代/紀元前(BC)と紀元後(AD)/世紀と千年紀/人種・語族・民族
  *人種・語族・民族についてはもちろん、それぞれ元来の概念を説明するだけでなく、どれも現在は本質主義的にではなく便宜的にしか使えなくなっていることを説明した。

このぐらいのことを聞いた上であれば、高校生なら(一定程度の)暗記をする気になるのではないか。大学生なら「歴史なんて必要ない」とは言わなくなるのではないか。
これぐらいのことを、最初の時間に(たいした準備などしなくても)さらっと教えるのは、高校教員にも大学教員にもそんなに難しいことではないはずだ。

こうすれば、卵は立つ。



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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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