伸びる学生、伸びない学生

おとといの記事の続きで、大学に入って伸びる学生と伸びない学生がいる。
どこに差があるのだろうか?

うまくいかない学生のほうから、私の専攻である東洋史を例にして考えてみよう。
おとといの繰り返しになるが、

+漢文や中国語、英語などの読解能力が身につかない。これには主に2つのパターンがある。
 第一は単語の意味だけで構文を考えずに訳そうとする。そうすると、それぞれの単語にはたいてい複数の意味があるから、順列組み合わせでものすごい数の訳し方が可能になってしまうから、適切な訳はめったにできない。
 第二は訳した結果の日本語に無頓着である。日本語としてどうにもおかしい訳というのは、たいていどこか間違っているのだが、日本語の文章を日ごろ正確に読み書きしていないから、自分の訳文の日本語が適切かどうかもわからない。

人文系にとって、資料読解は絶対的な必要条件(十分条件ではもちろんない)なので、ここが突破できないとつらい。ここでは、ひごろ自分の母語ないし第一言語で、どの程度高度な言語生活をしているかが問われる。そこがきちんとしている学生は、大学に入った時点で漢文や外国語そのものができなくても、入学後のトレーニング次第でじゅうぶん上達する。

+オタクから抜け出せない。
ある意味のオタク性、つまりあることが大好きで始めたらやめられない、という性格は、学問をするうえでも重要な必要条件である。しかし、歴史学の場合、そこから抜け出せずに苦しむ学生も少なくない。これも2つのパターンがある。
 第一に歴史学と推理小説の違いがわからない。歴史学の「ひとつのカギが解けるとすべてが鮮やかに解ける」というような事象はほとんど存在しない。複数の視角や説明を考えられないと、歴史の研究は難しい。
 第二は他人が見えないこと。レジュメなどの形式面でも、中身の面でも、他人にわかる研究発表をしたり論文を書くことができない学生がよくいる。芸術は他人にわからなくてもいいかもしれないが、研究はそうではない。

ここでは言語運用能力や社会性もだが、いちばん大事なのは、自分の思考の枠を変えたり他人の目で自分を見直したりできる「アタマの柔らかさ」があるかどうかだと思われる。「真面目だが頭が硬い」学生がうまくいかない例を見かける。

+資料読みや語学はよくできるし、試験やレポートの成績も優秀だが、「論文」が書けない。
文章力や調べる力の問題ではなく、自分でテーマを決め内容を組み立てて論文にすることができない学生が目立つ。これにも2つのパターンがある。
 第一は、絵に描いたような「言われたことしかできない」学生。けっこういる。
 第二は、それと重なり合う部分もあるのだが、「ひとつのことに深入りできない」学生がときどきいる(私の同類?)。いろいろ知っていて考えも幅広いのだが、自分の責任で決定的にひとつの世界に踏み込むということが恐いのだろう。

これは、子どものころから自分で考えてなにかをする経験を積んでいないと、どうしようもない気がする。

+もうひとつ、最近みんなが頭を悩ましているのが、精神的な弱さ、未熟さである。これも2方向のあらわれかたがある。
 第一は最近とても多い、「ちょっとの失敗ですぐつぶれるよい子」
 第二は長所にせよ欠点にせよ、自己評価ができないこと。

ほかにもいろいろあるのだが、今日はこのぐらいにしておこう。伸びる学生のパターンは別の機会に書きたい。

実に当たり前だが、基本的なしつけ、それに「読み書きそろばん」がやっぱり大事なのである。
それができている学生(あるいは、こういうところが問われると理解している学生)なら、入学時点でできなかったことを教えるのは、そんなに難しくない。

「阪大生は高学力だから、そういう理想論が語れる」?
半分正しくて半分間違っている。

******************
研究室での息抜きにベトナムのインスタント・コーヒー。このごろはコンデンスミルク入りの「ベトナム式コーヒー」のインスタントだけでなく、こんなのも売り出している。
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ついでに、石橋商店街で買った「鬼まんじゅう」
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プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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