地下鉄の弱点

大阪人はよく、東京の地下鉄の各路線が東西方向ないし南北方向の直線ルートになっておらず、互いに直交していないことを、「わかりにくい」と馬鹿にする。

これに対し、今月の鉄道ジャーナルで指摘されているように、大阪市営地下鉄には、東京と比べて他社との相互乗り入れが遅れていることによる不便さがある。昔の「市営モンロー主義」が原因といわれる。今から相互乗り入れしようと考えても、堺筋線以外はみな線路の脇に敷いたもう1本のレールから電気を取る第3軌条集電方式だから、パンタグラフで集電する私鉄やJRの路線との相互乗り入れはできない。

「市営モンロー主義」は、近鉄と阪神を難波で相互乗り入れさせればそれで十分なところに、わざわざ千日前線を別に作ったような弊害も生んだ(リニアモーター路線以外ではもっとも乗客が少ない)。他方、東京では最初に作った銀座線と丸ノ内線に乗客が集中しすぎないような路線網を早くから作ったのに、大阪では新大阪駅や千里ニュータウンえの延伸も、中百舌鳥駅での南海高野線・泉北高速との接続も全部御堂筋線にしてしまったから、御堂筋線だけが全国トップクラスの乗客を運び、他線はいずれも東京で言えば閑散路線の代表格である都営浅草線や三田線よりずっと少ない乗客しか運べないことになってしまった。このアンバランスはちょっとひどい。

なお大阪でも東京でも、地下鉄にはもともと乗り換えなどで長い通路を歩かせても平気という無神経な駅の設計が目立ったが、ある時期以降に建設された路線で、見込みを大幅に下回る乗客しか集まらないことが多いのは、そうした不便さがいよいよ耐えがたくなってきたせいである。
具体的には、新しい路線は既存の路線と交差するためにものすごく深いところを走るケースが多いこと(たとえば大阪の永堀鶴見緑地線、東京の大江戸線)、それに深いトンネルを掘ることや建設費一般の高騰によって運賃が高くなることなどが問題である。その路線が、初期に建設され乗客の多い路線のバイパス路線として建設されたケースなど、競合する路線がある場合には、駅が地下深くて乗降や乗り換えに時間がかかったり運賃も高いのでは、勝負にならない。それどころか、地下鉄は3キロとか5キロとかの近距離利用が多いが、そういう距離で目的地までのドアツードアを考えると、体力のある若者なら自転車で走った方がよほど早いということになりがちである。LRTに切りかえるのでなければ、通路の大幅改善や、郊外路線とつないだ急行運転で新たな層の乗客を誘致するなどの策を組み合わせないと、鉄道の機能が果たせないのである。

もう1点、言い古されたことだが、欧米で出来て日本で出来ないのは、大都市内ではどの社の路線を利用しても同じ区間(距離)なら同じ運賃、同じ社の路線だけ乗っても別の社の路線を乗り継いでも同じ区間(距離)なら同じ運賃、という共通運賃制である。
日本では東京メトロと都営の乗り継ぎのように若干の乗り継ぎ割引はあるものの、基本的に別の会社の路線に乗り継げば別々に運賃を払わねばならず、近距離区間を乗り継いだ場合には、同じ距離を1つの会社だけの路線で移動した場合と比べてひどく割高になる。
人口があまりにも多く、相互乗り入れないで全部の乗客をターミナルで乗り換えさせたら大変なことになる東京ですら、都営浅草線と京成・京急の相互乗り入れのように、国鉄=JRと全面的に競合する路線では全然乗客がつかなかった。それは路線の立地自体が不利なことやダイヤのまずさもあるが、ほとんどの区間で2社ないし3社合計の運賃が並行する国鉄(JR)より高くならざるをえなかったことが決定的な原因だろう。
JR同士では別々の運賃にしなくても売り上げの適正な分配ができるのだし、共通カードがこれだけ普及しているのだから、JR・私鉄と地下鉄を合わせた東京都内共通運賃体系のようなものもできると思うのだが。

このような点を改善しないと、不景気や人口減少のなかで地下鉄の役割はどんどん縮小しかねない。トータルの所要時間や運賃を考えないままで大きな路線網を作ってしまった日本の地下鉄の歴史と現状にも、日本社会の問題点がはっきり示されているように思われる。

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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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