「歴史基礎」と大学入試

日本学術会議で昨夏に、「世界史必修」にかえて高校で「地理基礎」「歴史基礎」の2科目を設置して必修化することが提言された(実施は早くて10年後と言われる)。この考え自体は(「地歴基礎」にできないかという議論を別とすれば)首肯できるのだが、そうなればますます、選択科目となった世界史の履修者は激減するだろう。おまけに「歴史基礎」の内容が日本史に偏っていたりしたら、高校までで教わる世界史はほんとうに消滅に近くなる。
単に「それでは困る」という既得権擁護に聞こえる議論をするだけでなく、いろいろなケースを考えて今から備えておかねばならない。対応策の中では、大学教養課程での歴史の授業を増やし必修化させるという選択肢を中心にすえる必要があること(また、その授業で高校世界史から暗記を外して代わりに考えさせる内容を盛り込んだ授業ができるような大学教員を、大量養成・配置しなければならないこと)は、何度も何度も何度も何度も述べてきた。

「歴史基礎」に戻って、この科目をセンター入試に入れるべきかどうかをめぐって関係者の意見が割れており、阪大歴史教育研究会のブログ http://rekikyo.blog.fc2.com/ でも論争がおこなわれている。

昨夏の北海道の世界史研究会でも話されたように、学術会議提言のまとめ役をされた油井大三郎先生は、必修科目は入試になじまない、入試にあれば暗記重視になって考える力を養成する教育が難しくなる、という理由で入試への組み込みに反対なさっている。他方、「現代社会」の先例が示すように、入試になければだれも真面目に教えず/学ばす、科目として形骸化するのは火を見るよりも明らかだという意見がある(歴史基礎が入試科目にならなければ、世界史・日本史の受験者数はそれなりに維持できるかもしれないが、しかし地歴・社会の時間数全体が昔よりずっと少なくなっているのに入試に無関係な科目で週2時間取られるとなれば、「歴史基礎」で新たな履修逃れなどが起こりかねない)。

どちらにせよ、入試を変えなければうまくいかないということだ。
そのための対策として、学術会議提言に書かれていた教員養成教育の改革、関連学会が教える内容のガイドラインを作って末梢的知識を教えたり出題できなくすることなどは当然だ。まだ事態を理解している大学教員は少数だが、急速にことを進めねばならない。今の状況は「昭和19年前半の日本軍」に近い。

それだけでなく、昨日の繰り返しになるが、センター入試はやめて、「どう見ても大学教育になじまない受験生だけをふるい落とす」ための、資格試験もしくは高校までの達成度試験に変えるべきだ。そのうえでとなれば、全国統一試験には地理基礎、歴史基礎のような科目こそふさわしく、世界史・日本史などの個別科目は個別入試(2次試験)で課せばよいように思われる。このブログを見ておられる皆さんのご意見はどうだろうか。

今夜のクラシカ・ジャパンでも、ドヴォルザークのチェロ協奏曲、ショパンのチェロ・ソナタなどチェロの音色が流れていた。心が落ちつく。

明日で阪神淡路大震災から丸17年。






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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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