FC2ブログ

ジェンダー史シンポの収穫と争点

先週末のジェンダー史シンポで最大の収穫(私やその仲間にとって)は、グローバルヒストリーが敵視の対象でなく「入っていってジェンダー化する」対象として語られたこと。「グローバルヒストリーは個人が見えない」「グローバルヒストリーは自国史と対立する」などおなじみの議論に対する積極的な反対意見が交わされたことは、嬉しいオドロキだった。

他方、落合恵美子さんがアジア諸国間の比較について話された、(1)東アジア近現代の家族主義は近代家族モデルによるもので、「伝統的な家族主義」とされるものは近代化の過程で創られた伝統である、(2)日本の「家」は双系制であるなどの論点は、背景にある共同研究の方法が非常によく出来ているので説得力があるが、それにしても意見が割れるところだろう。(1)は現在の保守派などが思っている「伝統的な家族」はもちろん創られた伝統に違いないが、前近代史の専門家としてはそれが創られる歴史的基盤、「近世化」した家族の近代家族への連続性なども重視したくなる。東アジアのネーションを前近代との断絶と見るか連続性を重視するか、近現代のアジア間貿易をウエスタンインパクト後に再編されたものと見るか近世との連続性でとらえるかなどと同じく、これも近世と近代の関係をどう見るかに関する「永遠の論争」のテーマだろう。(2)も日本の家が中国の宗族などと比べて双系制的要素をもつことは間違いないが、父系制でなく双系制と見るのは、双系制の定義ないし用法を広げすぎのようにも思える。

いずれにしてもたびたび書いてきたように、現代東アジアの家族の変容と少子高齢化の問題は、歴史教育[日本とアジア・世界をつなげて学ぶ歴史]と結びつけるべき現代的課題の中でも最重要なものの一つだろう。そのことを意識する中年以上の男性研究者・教員が少ない点、そもそも中年も若者も男も女も東アジアの文化や社会を知らなすぎる点は、ぜひとも改善しなければならない。おりしも発表された日本のジェンダー格差指数のいよいよ悲惨な状況が、せめて刺激になるといいのだが

関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセス・カウンター
あなたは
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR