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グローバルヒストリーの入門書2点

山下範久さんが編んだ『教養としての世界史の学び方』を先日やっと読み始めた。やられた感の強い好著だ。こういう本(市民向けの歴史学の入門書)を前の科研の成果としてちゃんと出していれば、阪大歴史教育の科研が落とされることもなかったんじゃないかと反省。
そこで負け惜しみとして2つ悪口を書いておこう。その1。ビジネスマンの教養書のようにも書いているが、そもそもこの本が理解できる基礎教養を持っているビジネスマンが多数派だったら、日本社会はこんなにひどくなってないだろう。そういう感覚を欠いた「男性ビジネスマン(特に中年の)の価値観」が日本社会を支配し、出版企画もそういう男性に売れそうかどうかで判断する風潮が、明らかに日本をダメにしている。そもそも人口比から言って、男性ビジネスマンは国民の多数を占めていないだろう。
その2。はじめの方で山下さんが、近代ヨーロッパが作り出した強者中心の枠組みを共有したままでいくらヨーロッパ中心史観を批判してもダメだよと書いてるのに、それをやってる著者がいること。

もう1冊、3月の愛知世界史研究会等で取り上げられている(阪大歴教研も6月に著者をお招きしている)北村厚さんの『教養のグローバルヒストリー』。これは現在の高校世界史B教科書が、枠組みが古いためにみんな気づかないが、実は組み替えをすればこれだけグローバルヒストリーを踏まえて書いてあるんだよ、という本。発想が良い。
ただしドイツ史専門の著者ゆえ、個々の記述はアジア史や日本史など間違いもある。これを「だからダメだ」とやっつけるのでなく、みんなで協力して細部の不正確さを正していく方向で、この本が活用できたらすばらしい。なお著者はこの本を使った所属大学の授業で、学生に問いを作らせその出題意図まで書かせているそうだ。中学や高校で歴史の新しい教え方をする教員のトレーニングとして素晴らしい。6月の阪大の例会でその話も聞けるのが楽しみだ。
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プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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