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全部教えろとだれが言った?-阪大歴教研の開催趣旨

私の本名でグーグル検索をすると、大学の公式サイトや私の著書を扱う書店のウェブサイトとならんで、少数だが私の本や講演の紹介・感想を書いてくれているものが出てくる。ただネットの世界では当たり前だろうが、誤解や曲解もある。著書がたくさんある某有名批評家のブログなどひどいもので、私の『わかる歴史・面白い歴史...』を罵倒しているのだが、このひとがまともに本を読まずに片言隻句だけ見て批評する(これなら時間をかけずにたくさん本を書くのも簡単だ)ことだけでなく、「東南アジアなど断片的知識で十分だ」と蔑視していることを自分で証明してしまっている。

それとは月とスッポンで本論は正確に紹介してくれているのだが、グーグルでえらく上位に出てくる、5年前の高校教員向け講演「東南アジア史 誤解と正解」
http://www.let.osaka-u.ac.jp/toyosi/main/seminar/2006/index.html
に関する記事にも、上のインチキ批評家と同じ誤解をしている点がある。私が「高校生全員に東南アジアをこれだけ詳しく正確に教えろ」と要求しているように勘違いをしていることである。

日本では大半の学者が「これこれが教えられていないのがケシカラン、もっとこれこれを教えろ」という言い方しかしない(できない)から、私もそれと同じだと思われるのも無理はないのだが、大阪大学歴史教育研究会で私が口をすっぱくして言ってきたのは、
(1)年代や事件などの実例(の正確な説明)なしに歴史を教える(語る)ことはできないが、その実例を全部覚えさせねば歴史を理解させることにならない、などという馬鹿な話はない。
(2)阪大歴教研で提供するのは、このまま高校生に教えるべき中身ではなく、「その分野を教えるならこれだけ理解したうえで教えてほしい」という教員用の知識である。これを聴いた教員が実際にどの部分をどう教えるかは次の段階の問題であって、一般論としてはわれわれの議論の対象ではない。

の二点である。「そんなのは逃げだ」と思う方がいるだろうが、われわれは教育学の専門家ではない。教えるベースにすべき歴史知識や考え方の提供に責任はもつが、教室での教え方には責任をもてない。また少なくとも私は、専門である東南アジア史について、最小限、標準レベル、詳しいレベルの3段階に分けて教えるべき事項の提示を何度も何度もしている。県単位の高校教員の教科研究会などでも、私の講演に対して「そんな詳しいことを教える余裕はない」と食ってかかる先生がいるので、最近の講演では先手を打って「これは全部教えろ」という講演ではありませんと断ってから話を始めることにしている。

大学教員・院生も含めこの点がわからない人というのは
 ・単純に不勉強
 ・東南アジア史などやはり詳しく知る必要を認めていない。
 ・ものごとを一面的・平面的・羅列的にしかとらえられない。
のどれかだろう。二番目も困るが、いちばん厄介なのは物事を論理的にとらえる訓練を欠いた三番目のタイプである。とくに大学側にそういう人が多いことが、暗記入試がなくせない大きな理由である。「ドラゴン桜」でも世界史の受験には立体的・階層的な整理が必要だと書いてあったと思うのだが。歴史研究者・学生・教員に、論理的思考や論理的表現の訓練を必須のものとしなければならない。

付随してもう1点、われわれは高校教員(高校教育界)だけを批判しているのではない。そちらに問題がないとは言わないが、より大きな問題は、
 ・入試問題を出し教科書を書き教員養成を行う大学側の不勉強や体質の古さ
 ・高校側は入試のためとして暗記教育を続け、大学側は高校が暗記教育しかしていないからという口実で暗記入  試を続けるという「共犯」構造
などであり、それらの克服を困難にしている
 ・明確なビジョンや責任感もなく、不十分な物質的条件しか与えずに現場の奮闘や工夫だけを求めるという、大  日本帝国の軍隊と同じ構造の教育行政
である。形ばかりの出前授業やオープンキャンパスなどでない、もっと全面的な高大連携(同様に中高連携や小中連携)なしに、この状態を改善することはできない。そこまで考えるのが「阪大史学の挑戦」である。
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プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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