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気候変動の世界史

アジアンフェアーの記事と順番が逆になったが、「10月戦役」第3戦は15日の歴史教育研究会での、「気候変動の世界史」の発表。
研究会で主張している「自己の専門性に閉じこもらない教育・研究」「その会の性格をよく知らない外部専門家の狭い発表を並べる通常の形式でなく、会に属する専門外の人間が広い発表をして専門家のコメントをあおぐやりかた」などをお題目に終わらせないために、恥を覚悟でやった発表である(地球圏の関野樹先生にコメントしていただいた)。

内容は(1)先史時代から現代までの気候変動に関する主なトピック、(2)気候変動のさまざまな原因、(3)過去の気候変動を復元するさまざまな方法、の3つに分けて話した。レジュメは歴教研HPに載せる予定なので、ここではいくつかの考え方・理解のポイントについて紹介しておこう。

まずこのテーマを取り上げる意義として、
・気候変動の歴史は、文理双方にまたがる、日本と世界を切り離せないなどの面で、今後の歴史教育(や歴史研究)に適した題材である。

次に過去の気候変動とその影響や原因について、
・最終氷期までの気候変動は、その後(完新世)の変動より幅が大きかった。ただし時代が下ると人口が増加し社会が複雑化しているため、小さな気候変動でも大きな影響があらわれることが増える。
・完新世の前半は温暖だったが、その後の気候は中世温暖期など何度かの逆行をはさんでゆるやかに寒冷化し、近世にはかなり冷え込んだ(小氷期)。しかし19世紀後半以降は化石燃料の消費増大を主因として、気温の上昇(地球温暖化)が続いている。
・温暖化や寒冷化は一方向に直線的に進むものではなく、波動をなす。むしろ「温暖期の合間の寒の戻り」など全体傾向とは逆の動きが大きな被害や混乱をもたらす。
・温暖化や寒冷化は、地球全体が同時に同じ方向に向かうのではない。大陸と大洋、氷河や高山などの不均等な分布その他の原因により、ユーラシア西部と東部で温暖化・寒冷化の時期がずれたり、同じ緯度の同じ季節でも一方は暖冬、一方は豪雪になるというように、違った気候の動きになることが珍しくない。
・他方、「北極振動」「エルニーニョ・南方振動」など遠隔地同士の大気や海流の動きの相関性(テレコネクション)にもとづいてある地域・季節の気候が温暖-寒冷、湿潤-乾燥などの波動を示す現象がつぎつぎ発見され、そのメカニズムの研究が進められている。
・寒冷化や温暖化による人間社会への影響は、気温そのものの変化が農業生産力の変化、海面の上昇や低下、生活環境の変化などをもたらすだけでなく、降水量の変化が旱魃や洪水につながったり、気温・降水量によって植生・動物相や疾病パターンが変わるなど、さまざまな径路をとる。
・人間社会のさまざまな現象に対する気候変動や気象条件の影響はこれまでよりずっと広く理解すべきだが、「それで歴史のすべてが説明できる」という短絡(環境決定論の一種)は正しくない。実際には技術や人口の水準、社会・国家の仕組み、文化のありかたなど様々な要素により、同じ気候変動が違った影響を与える。
・歴史上の「発展」「衰退」と温暖化や寒冷化の関係も、「中世温暖期」のおかげで貧困地帯から脱したアルプス以北のヨーロッパが、近世には寒冷化を背景とする危機(「17世紀の危機」など)への対応のなかから近代社会を整理させたように、単純でない。

また研究方法について
・研究には理系的・文系的の両方向があり、湖底堆積物の「年縞」の研究や、年輪・氷床コアなどに含まれる同位元素の研究といった理系的方法はきわめて精密になっているが、まだ未確定な事項、説明や予測のモデルが不完全な現象は少なくない。歴史時代については文献や絵画などの研究に頼るところも大きい。また「ある温度の変化が証明できたとして、それが社会にどの程度影響したか」は、社会科学的研究が必要な場合も多い。要するに「文理融合」的研究でなければ、歴史時代の気候変動は十分解明できない。

最後に高校歴史教育で「どこまで使えるか」について、
・たとえば教科書本文に書けるほど確実・重要なことはまだそう多くないだろう。しかし過去10万年の平均気温のグラフ、ヨーロッパにおける中性温暖化と近世の寒冷化、近代以降の地球温暖化などは、必須事項にしてもいいと思われる。日本史でも弥生時代や江戸時代の寒冷化などいろいろ取り上げることがあるだろう。
・その他、短期的な気候の動きが歴史を変えることもあり(ウエザー・ファクター)、ナポレポンやヒトラーと冬将軍のほかにも、紹介しうる気候・気象のエピソードはたくさんあるだろう。気候変動の原因や研究方法とあわせて、コラムの活用などの方法を駆使したい。ヨーロッパ中の美術館をめぐって中世以降の風景画の空の色をひたすら数えた学者の話なんてのも、楽しいではないか。


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プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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