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安保法案に賛成はできない理由

安保法案の採決目前とか。私ごときの影響力など無きに等しいし、これまでの繰り返しが大半だが、国民の責任として意見をまとめておきたい。
前提:私は「集団的自衛権」に懐疑的だが、全面否定ではない。

いきなり寄り道だが、安保法案反対派を十把一絡げに親中国呼ばわりするのはいい加減にやめてほしい。日本のベトナム研究者で「親中派」を探すのは、憲法学者で安保法案が合憲だという人を見つけるのと同じくらい難しいだろう。
ぶっちゃけた言い方をすれば、現場を知りもせずに「中国の脅威」「尖閣を占領されたらどうする」などと繰り返すだけの「平和ボケ」した諸君より、われわれのほうが中国の怖さも大変さも強さもずっとよくわかっている。だから諸君のお気楽な言論にはくみしないのだよ。

忘れないうちに質問しておこう。来年の国会まで決定を延ばしたら、その間に尖閣が占領されるんですね?
本筋に戻る。今回の論争の特徴は、一般論として集団的自衛権に賛成だが、現行憲法ではそれはできないので、やるなら憲法を変えるべきだ。今回のやり方では立憲主義が崩れてしまう、という立場からの反論がたくさん出ていることだ。
それに近いが、政府の説明は十分でない、今国会での成立は早すぎるという意見も世論調査を見る限り多数にのぼる。

これらの観点からの反対・懸念を押し切る論拠は、「中国や北朝鮮の脅威がそこまで切迫している」か、「選挙で勝った政権はなにをしてもいい」、それに「だってアメリカに約束しちゃったんだもん」の3つしかないだろう。

第一の「中国・北朝鮮の脅威に備えなくてどうする」はマスコミやネットで普通に見られる意見だが、現状の個別的自衛権で対処できないかたちで中国や北朝鮮が来年の国会あるいは近い将来の憲法改定までに攻めてくることを、だれも証明していないんじゃないかな。
二番目の「選挙で勝った政権は何をしてもいい」。その考えが、韓国で台湾で、南アジアやアフリカ諸国で、政情不安とクーデタ合戦を生んできたことはわかってるんだろうか。間違って日本に左翼政権が出来て現政権支持者に大量報復したらどうするつもりだ?

東京裁判史観に反対し、日本の誇りを取り戻すのに熱心な諸君が、どうして三番目を問題にしないのか、私にはどうしても理解できない。自衛隊幹部が国会の知らないところでアメリカに早期成立を約束していたって、どうみてもフライングでしょ。
陸上競技でも水泳でも、フライングした選手につられて全員がゴールまで走った(泳いだ)としても、フライングしたレースは無効だろうが。

要するに中身でなくやり方がルール違反だということ。これについて国会でも「十分な審議」がおこなわれたとはとうてい言えない。中身が良ければやり方はどうでもよい、というのは、先進民主主義国でなく権威主義国家のやることである。おっと、手続き論で大事なことを忘れていた。現在の国会は定数配分について「違憲状態」で選出されたものにすぎない。そういう国会でこんなに大事なことを決めるのも、健全な民主主義国家では考えられないことだろう。

要するに「文句を言わずについてこい」。みんなが豊かになるならそれも一定の説得力をもつだろうが、今の日本は先進国中最悪の格差社会。たとえばリー・クアン・ユーの開発独裁政権なみの説得力はもたない。
歴史を暗記でなく学んでいれば、こういうときに隣国への憎悪をあおって国民をまとめようとした政権がたくさんあったことが、容易に思い出せるはずだ。
一人親の子供の貧困率、報道の自由度、ジェンダー・ギャップ指数。。。今の日本はもはや「アジア唯一の近代化した国家」ではない。そこに輪をかけた今回の報道統制と報道側の自主規制。日本は二流の権威主義国家の道をひた走っているのだ。それを全部隣国のせいにできるかな??

ひとやすみして再開。今度は法案の中身。最大の批判は、これで日本は「より安全」になるだろうかということ。冷戦時代のソ連も思いっきり危険だったんだけど、そのときいらなかった集団的自衛権がなぜ必要なのかは、推進派は答えてないよね。変わったのは日本の安全保障の状況というよりアメリカなんじゃないの?
むしろ「アメリカやEU諸国と日本は別」という定評により回避できていたテロの危険が増すだけじゃないのか。

背景にあるのは昔からある「安保ただ乗り」論。日本はタダで米軍に守られている、応分の貢献を日本もすべきだ、そうしないとアメリカと対等の立場に立つことはできない、という理屈(そもそも、アメリカが対等な他者を認めるということがあるんだろうか。中国にないのと同様にアメリカにもないんじゃないだろうか?)。

しかし、日本の基地などを使ってアメリカが好き勝手をしてきたのも事実だろう。日本が独立を回復する以前に始まった朝鮮戦争はともかく、日本の基地をフル稼働させたベトナム戦争が、日本を守るための戦争だったんですかね?
このアメリカに今まで以上に徹底的に尽くす仕組みが、今回の安保法案ではないのか。

ところでアメリカは多元的な国家である。ジャパン・ハンドラーたちがすべてを動かすわけではない。アメリカの主要な関心は、東アジアより中東ではないんだろうか。
ということは、日本が期待する「東アジアで助けてもらう」ことより、「中東(やアフリカ)で手伝わされる」可能性の方が大きいんじゃないだろうか。

また東アジア自体で、日本が徹底的に尽くしたら、アメリカは日本だけを徹底的に守ってくれるだろうか? 世界帝国の歴史を学んでいれば、そんなことはないとわかるはずだ。アメリカが中国と握手することはないと言えるだろうか? 現代史を学んでいれば、ニクソンと毛沢東のことぐらい思い出せるはずだ。そのときに「鬼畜米中」を叫んで戦争するつもりだろうか?

ここから完全な繰り返しになるが、集団的自衛権を容認しながら「アメリカに利用されて捨てられる」事態を回避し、「一流国日本のプライドを世界史に示す」という推進派の狙いを実現するにはどうしたらいいか?
それには米軍が「必要に応じて」出してくる情報に飛びつくのでなく、自前で世界の情報を収集・分析・判断する一流のインテリジェンス能力が必要になる
。しかしこれは、(それ以前も一流だったかどうかは疑問だが)第二次大戦後の占領軍が日本から徹底的に奪った能力ではないのか?

またそれは、英語だけではできない。アラビア語やペルシア語、東南アジアの諸言語などいろんな言語の達人が必要である。しかもそれは会話能力だけではない。政治・法律から文学・学術論文や科学技術まで、あらゆる領域の硬い文章を読み書きする能力が必須である。

またそれらは、一部の専門家だけに任せておけばいいころだろうか。海外に派遣される自衛隊員や関係者は、英語すら満足にしゃべれない状況で、いざというときに正確な判断ができるだろうか。国内の警察は、怪しい外国人に対して的確な対応ができるのだろうか。
特殊部隊でない「街の普通のおまわりさん」が、ひいては普通の住民が、そういう能力を身につけていなければ、安保法案から生じる状況はコントロールできないだろう。それができない状況でひとたびテロなどがおこれば、「関東大震災後の朝鮮人虐殺」と類似した事態は容易に起こりうる。
これらの事態に対応するには、現代日本の語学教育やコミュニケーション教育を全面的に改造しなければならない。ある意味それに気づいたのが1990年代の「ゆとり教育」だったが、あれすら拒否している日本社会の状況では、集団的自衛権は「100年早い」。

ネトウヨ諸君のためにまた脱線するが、君たちは「悪い中国人を摘発しやっつける」ことを(ネットで袋だたきにする以外のかたちでの仕事は)誰かがやってくれると思っている。でも君たちが街で、会社で学校で、やらなきゃいけないんだよ。そのときネットでやってる方法が通用すると本気で思う???

戻って、こういう適切な諜報能力やコミュニケーション能力を育てるための投資を、歴代日本政府はしてきたか? 残念ながらノーである。東南アジアやアフリカに至っては、そもそも専門家や学生の数が少なすぎる。裾野が狭ければ優秀なトップレベルも出にくいのが理屈である。
政府はフィリピンやベトナムの政府に対して軍事協力の期待を高めさせているが、フィリピン人はともかく「ふつうのベトナムの軍人やお役人」の英語を苦労なくわかる日本側の関係者がどれだけいるか。英語になっていないベトナムの内部文献を手に入れて読みこなせる専門家がそれだけいるか。

アジア太平洋戦争の際の日本政府・軍は、そんなことを考えずに戦争を始めてしまってから、後付けで人材養成に乗り出したが、4年足らずで日本が負けてしまったために、十分実を結ばなかった。ベトナム戦争の報道や高度成長期の東南アジア進出にあたったのは、現地語をほとんど知らない人たちだった。

現在では東南アジアのどの国にも、ハイレベルな日本人の専門家がいるが、それは相変わらず、日本での出世コースから外れた少数の変わり者でしかない。

政府がこの状態を変えるには、たとえば東南アジア研究への投資を10倍に増やし、(権威主義が好きなのだから、なんなら優秀な学生の専攻を上が決める中国式のやり方でも採用して)、日本と欧米関係の専攻ばかりに集まる優秀な若者を、東南アジア(や同様にアフリカ)にも分散するような仕組みを作ることだ。

それが実現したら、私は政府を支持するかもしれない。ただしこれまでの日本国家は「欧米崇拝、アジア蔑視」という正当性原理としてきたから、実はこれって「国体の変革」につながるんだよね。

もうひとつ法案の内容がもたらすものとして懸念されているのが、ただでさえ破綻に瀕している日本の国家財政が、集団的自衛権行使による海外派兵や戦争参加に耐えられるかという問題や、経済的徴兵制の問題であることは言うまでもない。
昔の戦争はうまくいってるうちは経済拡大につながったが、この集団的自衛権で想定されている戦争でそういうことが期待できるだろうか? 北朝鮮をつぶせば東アジアの景気がよくなる? アメリカに協力すれば投資資金が回ってくる?

それとも「在日特権」を廃止すればカネはいくらでも出てくるw? どうにも集団的自衛権の財政的裏付けが理解できないので、だれか教えてほしい。

もう一点、近代戦争は軍隊だけがするものではない。ほかのたくさんの人々や企業が動員される。自衛隊員がたとえば死んだら補償が受けられるだろうが、徴用された一般人はどうなるのか、十分な議論はできているのか? アジア・太平洋戦争では、たくさんの人が補償を受けられなかった。
おっと、自衛隊員が海外で罪に問われた際にどうするかという問題もあったっけ。

最初の方で書けばよかったが、この政府が目ざしネトウヨが支持しているのは自由民主主義体制ではない。日本のすぐれた伝統でもない。実は、かれらが強く非難する中国の儒教的権威主義体制と、きわめて近似したしくみが、かれらの目ざすものである。

その証拠は、現在のNHKを見れば明らかだろう。あれは民主国家の報道ではないが、中国なら普通だろう。

また脱線だが、何でも他人(外国)のせいにする、それは日本の美しい伝統ではない。
気持ちいいか気持ちよくないかだけで判断する、自分がどう見られているかばかり気にする、そういうのは日本のすぐれた伝統ではない。
自分たちの(世界で唯一ではない)ルールに合わないもの、自分たちをちょっとでも批判したものに対してボコ殴りにしていいなどというのは、日本の美徳でもなんでもない。

そろそろまとめよう。(1)立憲民主主義が崩れる。政府は中国的な権威主義に向かっている。(2)日本の危険がかえって増す。(3)それを防ぐ高度な諜報能力も一般レベルの国際コミュニケーション能力も日本にはない。こういう状態で安保法案を強行することには、どうしても賛成できない。
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自分で勝手に問題をあげてそれの理由をあげて自己完結してしまってる。例えばアメリカのどうたらこうたらとか...
自分は安保法案に賛成だけどそのせいで何も響かなかった。

なんだかな

集団的自衛権は あくまで権利であって義務じゃないですよ。
例として、アメリカは集団的自衛権によって日本を他の脅威から防衛する権利を持っていますが、あくまで権利なんで行使するかしないかはアメリカが決める事ですし、行使しないことでアメリカが非難を受ける道理はありません。
しかし、更に日米安全保障条約によってアメリカが日本を防衛する義務を生じさせています。
(ココらへんは当然ご存知なんでしょうけど、あえて無視してミスリードさせているように感じます。)
本来は、集団的自衛権は主権国家が持つ正当な選択肢の一つに過ぎません。

>>来年の国会まで決定を延ばしたら、その間に尖閣が占領されるんですね?
これも お馬鹿なミスリードですよね。
占領される可能性は低くなるとしか言えません。
「占領」しにくるのは中国であって、その意志決断は中国がしますし、
占領が成功するか?は中国の投入する戦力と日本が投入できる防衛力によるとしか答えられません。
抑止力も育つ(強化される)ものなのです。
法案や手続き取れば直ぐに効果が出るわけではありません。
これは軍事や抑止力に限りませんよね?何だってそうです。
来年に引き伸ばせば その分相対的に抑止力が弱体化していたでしょうね。
個人的には憲法9条削除派ですが
自衛隊を合憲としてしまうのなら 集団的自衛権の是非は憲法としては未定義になるでしょう。
普通に9条を読むなら自衛隊そのものが違憲なのですから。

No title

>これについて国会でも「十分な審議」がおこなわれたとはとうてい言えない。
 反対派がよく使う言葉だけど十分な審議って反対派の意見が通ることなのか?
議論が全く噛み合わない国会を見て野党に全く責任が無いような言い方がおかしい
デモの様な圧力をかけてる組織より責任者がテレビに出て説明してるほうが信用出来る
つまり審議拒否してるのは野党の方です

>冷戦時代のソ連も思いっきり危険だったんだけど、そのときいらなかった集団的自衛権がなぜ必要なのかは、推進派は答えてないよね。変わったのは日本の安全保障の状況というよりアメリカなんじゃないの?
中国の軍事費が日本の4倍になったこと、アメリカの軍事費が削減されつつあること、ソ連と違って中国の主敵は日本等が原因
つまり日本が変わってなくても外部要因によって危険度は変化します

>日本が期待する「東アジアで助けてもらう」ことより、「中東(やアフリカ)で手伝わされる」可能性の方が大きいんじゃないだろうか。
日本が単独で防衛するとなると周辺国と同レベルの軍事費が必要になるのでその負担分(約10兆円増加)を毎年援助してもらうのと同等のメリットがある。中東派遣やその他のデメリットを考えてもアメリカ軍駐留してもらったほうが得

>もうひとつ法案の内容がもたらすものとして懸念されているのが、ただでさえ破綻に瀕している日本の国家財政が、集団的自衛権行使による海外派兵や戦争参加に耐えられるかという問題や、経済的徴兵制の問題であることは言うまでもない。
個別的自衛権だけの方が経済負担が大きいです。現在の駐日米軍と同じくらいの軍隊の維持費を考えたら中東派兵の方が負担は小さい
それと「経済的徴兵制 」って何?誰かを借金漬けにして無理やり自衛隊に入隊させることかな?ちなみに自衛隊員の給料は民間企業並かそれより低めに設定されてるのに何を言ってるのか・・

諜報の話になってくると話がズレてるのに集団的自衛権の話とごっちゃにしてる
多分筆者のいつも考えてることを垂れ流してるのだろうね
つまり東アジア分野への投資を増やしてくれって言いたいのだろう

No title

安保法案は認めない。
自衛隊は違憲の存在は違憲。
でも憲法改正は認めない。
じゃあどうしろと?


プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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