ピッツバーグの世界史教育

カンファレンスそのもののことが後回しになったが、とても勉強になった。
全体テーマはアメリカ国内および外国における学校世界史教育である。中身は中学・高校教育、大学教育、教員の養成と研修のすべてが含まれていた。ただし初等教育はなかった。やはり初等教育と中・高等教育の間には断絶があるのだそうだ。

日本では歴史に関する「全米教育基準」その他アメリカの先進的側面ばかり強調されるが、実は日本と同じような問題も沢山抱えていることがよく分かった(もちろんそれに対する取り組みは日本よりずっと組織的に見える)。たとえば「考え方」重視の教育運動が早くから行われているがそれは一国史としてのアメリカ史と強く結びついているという、カリフォルニア州立大のティム先生の話。アメリカし内部でもそれによって養われる考え方のモデル化に「5つの考え方」「6つの考え方」などいろいろなものがあるが、世界史だったらそれは一桁では済まないのではないか、という指摘も、まさにドンピシャだと感じた。そして「5つ」「6つ」「7つ」などであればいいが、12も15もあったらそれはスローガンやキーワードにならない。

州ごとの大きな違いに関するスーザンさんの報告もとても参考になった。また日本でも知られたウェブサイトWorld History for us allのダン先生の報告では、そこに載せられた授業の基礎になる問いかけについて、やはり「正解を教えろ」と言ってくる現場の先生がいるそうだ。ちなみにこのウェブサイトは、日本で評判の全米教育基準が保守派の攻撃ですべての州で(表面上は)不採用になったあとに作られたものだそうだ。問題が深刻なのは、多くの州が間接的にこの考え方を取り入れたが、しかしたいていは古い教育内容と折衷されたのだそうだ。日本でもアクティブラーニングなどの新しい方法で、古い中身(生徒は受験が済めば忘れてしまう)が定着させられるという問題は軽視できない。

AAWHメンバーのアフマッド・ファヌーク先生による湾岸諸大学の世界史教育の報告、ケンブリッジのカトリーヌ先生の過去に関する解釈の歴史として教える歴史教育の話もそれぞれ参考になった。

人種問題の教え方をめぐる発表(中身も東アジアの民族問題などと共通点が多かった)の途中で参加者がグループディスカッションを求められるなど、中身だけでなくやり方も面白かった。
  P1050329.jpg  P1050363.jpg 

私自身の報告は、日本の世界史教育の困難な状況(高校必修世界史の失敗、日本史必修を求める政治的圧力、大学教育の保守性)と、阪大の取り組み(歴教研の取り組みプラス『市民のための世界史』の紹介)という毎度おなじみのネタで、後半疲れたため、今回の骨である日中関係を改善するための古代からの歴史教育という部分がイマイチうまくしゃべれなかったが、日本でこういう仕事を延々と続けているグループがあるという話は、それなりに面白がってもらえたようだ。 

これは2日目終了後に古いファカルティハウスでおこなわれたディナーのデザート。なかなかの味。
P1050391.jpg

ついでにおまけで、大学の近くにあるヌードルショップの「インドネシア風」。ピーナツがのせてあるが、やたらに辛いところは「インドネシア」ではない気がした。
P1050255早い夕食のインドネシア麺
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセス・カウンター
あなたは
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR