ダイアローグとモノローグ

NHKのBS1で深夜に放映しているベトナム戦争終結に関するドキュメントの、最初の2話を見た。
1話目はフランスで制作された番組で、パリでキッシンジャーとレー・ドゥク・トが行った秘密交渉がテーマだった。2話目は75年春、北・解放軍の急速な侵攻の前に、再派兵もできないアメリカが、南ベトナム政府・軍関係者の国外脱出をともなうアメリカ人全面撤退に追い込まれてゆく様子を描いた、アメリカ製のドキュメントだった。

フランスのインドシナものの映画や番組と、アメリカのベトナム戦争ものを比較していつも思うのは、フランスのそれにはとりあえず「理解すべき相手」がいるが、アメリカのそれは闘いに成功したり失敗する自分しか描かれないということ、つまりアメリカの作品はいつもモノローグなのである。敵は「なんだかわからない邪悪な敵(共産主義者)」の「熱帯のゲリラ」でしかない。タイだろうがインドネシアだろうが区別はあんまりない。アメリカ政府を批判するにせよ、ほとんどの場合それは、そういうわけのわからない敵に対する闘いが正義(アメリカの正義)に反していたという反省であって、相手の個性は問題にならない。フランスの話に戻って、パリ協定妥結まで紹介した番組の最後に挿入されていた、ベトナム北部の水上人形劇のシーンは、フランス人らしい象徴的な意味を込めたものだろう。

今回の場合、パリ交渉とサイゴン陥落というテーマの違いはあるにせよ、フランスの番組が北ベトナム・南解放戦線側の関係者の証言(かのグエン・ティ・ビンも含まれる)をまめに紹介しているのに対し、アメリカの番組はアメリカ政府・大使館や軍、それに南ベトナム政府関係者の取材オンリーで、北・解放戦線側の人間はいっさい出てこない。
もしかすると今夜の番組でそちら側からの視点が示されるのかもしれないが、どうなのだろう。

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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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