日本中世の災害と気候変動

岩波講座日本歴史4では、田村憲美氏の「自然環境と中世社会」が、日本中世史における気候や人口の変動を取り込んだ社会・経済研究を跡づける。他方、『日本史学のフロンティア2 列島の社会を問い直す』(荒武賢一朗・太田光俊・木下光生編、法政大学出版局)では市村高男「古代中世における自然大災害と社会の転換-復旧・復興過程に着目した視点の提示」が、巨大地震を中心に一部火山噴火にもふれている。慶長地震の復興をしなければならないときに朝鮮再出兵など命令したのが、豊臣政権の命取りになったという話はナットクである。

どちらの論文も実に面白いのだが、一方が気候変動ですべてを説明し、他方が地震ですべてを説明している感じがしなくもない。両方で触れられている飢饉や伝染病なども含め、総合的な歴史叙述のモデルが求められるところなのだろう。
その際、田村氏が触れているように自然科学的方法がどんどん進歩しており、そこではうっかり古い概念やデータを使うと相手にされないことになる。たとえば「中世温暖期」という言葉はもう古く、「中世気候異常期」という言葉が世界では使われている。だが、ようやく気候変動への注目が少しはされるようになったという段階にある高校教育では、そこまで教科書に書いていいかどうか悩ましい。

さいごに余談。市村氏の論考に付載された巨大地震の一覧表を見ると、高度経済成長期が数十年間も大地震や大噴火が起こらない奇跡の時期だったことがよくわかる。その時期が忘れられずにこの列島上で原発を動かそうというのは、やはり正気の沙汰とは思われない。
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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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