真相・長篠の戦い

昨日の毎日新聞朝刊「論争の戦後70年 第10回真相・長篠の戦い」(伊藤和史記者)も面白かった。
「信長軍の鉄砲三段撃ち-武田騎馬軍団の壊滅」という説が、旧陸軍参謀本部の『日本戦史』によって定着させられたという話は知っていたが、この通説を否定した「新説」も、さらにそれに反論した新・新説も在野の研究者によって唱えられたというのは、不勉強で知らなかった。となると、
もしかすると、プロの学界が放置しているために論争がきちんと位置づけられないといった事態もあるのかな? 日本史は裾野が広く、大学外にもすぐれた研究者がたくさんいるが、それだけトンデモ史学などと直接向き合わねばならないケースも多い。歴史は専門研究者の専有物ではないということを、外国史より強く意識させられる領域ともいえる。

この記事がよかったのは、単にどちらが正しいかという謎解きをするのでなく(毎日の古代史記事は謎解き趣味に徹している)、「新説」と「新・新説」が個別論点では対立しても実は両者に共通点があることを指摘している点である。とくに両者の戦国時代像が、「天才信長の新戦術」対「守旧派武田の旧戦術」といった対比や、この合戦が戦国時代の戦術的転換点になったとするような安易な図式化をともに否定している、と述べたところが大事だろう。

「長篠合戦がこれだけ有名になったのは、いろんな問題が対立的に描かれ、わかりやすいからなんです。。。でも、それは違うと一般の方とか、歴女なんて人種を説得するのは難しいですね。『信長命』なんて人たちを」と藤本氏(新説の提唱者の一人)が話す。鈴木氏(もう一人の新説の中心)ともども戦ってきた相手は、世間に刷り込まれた通念の根深さなのだろう。。。

「いずれにしても、合戦研究の最前線は、わかりやすい物語を好み、いったん染まった俗説からはなかんか逃れられない我々の歴史認識を照らしているのである。」
「戦国合戦なら、俗説に身を委ねる快楽も許されるかもしてない。しかし、近現代史が対象ならばどうか。致命傷となる危険が大いにあるのではないか」
とても大事な指摘である。


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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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