スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

理系向けの/理系的内容の歴史

昨日もある研究会で、理系のベテランの先生たちと話す機会があった。
どういう歴史が必要かという話をしたあとだと、昔と今で教科書の中身がすっかり変わっているというような話も面白がってくださる(鎌倉幕府の成立は1192年ではないとか、鎖国は当初は鎖国ではなかったなどなど、定番の話をした)。逆に実例と理由を聞かないかぎり、歴史教科書の中身が変化するとは夢にも思わないということだが。

『市民のための世界史』の紹介をしたのだが、序章から気候変動の歴史が書いてある点を、ある先生がとても喜んでくれた(中世温暖期と近世の小氷期の話ももちろん書いてある)。
気候変動など環境と開発、それに自然災害や疾病・医療などと社会とのかかわり(単純な環境決定論でなく社会や政治・経済・文化との双方向的な作用)というのは、今や歴史学の大事なテーマになりつつある。『市民のための世界史』では、18世紀末~19世紀初頭の火山噴火などもとりあげた。

近代史では科学革命と啓蒙思想とかいう話は昔からあるが、19世紀以降における科学と技術の結合、それが国家の命運を左右する状況なども大事なポイントだろう。近世まで「科学」(まだ多分に哲学の仲間)と「技術」は別物だったという話は、実際に学生も面白がる。それと近代的な世界観にとってニュートンやガリレイ・ケプラーの力学・天文学が大事なことはどこでも教えるが、生命のとらえかたについてダーウィンが与えた社会への影響は十分うまく説明されてこなかった気がする。『市民のための世界史』でもなんとか書こうとして、たとえば近代東アジアの知識人が社会ダーウィニズムを素直に信じた点などを取り上げた。米ソ対立でも、授業では科学技術の争いを取り上げている。

技術史では、モンゴル時代の前提となる中世の海上交流のところで、インド洋世界のダウ船とシナ海世界のジャンク船、それにアジアの周縁地帯での輸出品生産などに言及している。造船技術も海域史のゼミでときどき取り上げる面白い話題があるし、中国・東南アジア大陸部や日本の陶磁器生産をめぐる技術移転と産地間競争という話題は、アジア史学基礎(東南アジア史)の定番だ。いずれも市民のための世界史で時間があれば紹介したい、理系向けの話題である。

現代史では軍事技術と戦争の性格、エネルギーと原発などにもふれているし、東アジアでは近世の人口増加と現代の少子高齢化も扱っている。そうそう、阪大では「農学部向け」を考える必要がないためか、東南アジア農業の特徴の話などは『市民のための世界史』には全然書かなかったが(世界主要地域の基盤がそれぞれ稲作か麦作かという程度のことは序章でうれた)、むしろ学部の史学概論(歴史研究の理論と方法)ではたびたび取り上げてきたところである。

理系学生を面白がらせたり理系の研究者を巻き込んで文理融合型の研究をするネタを、歴教研としてもリストアップしておくと財産になるだろう。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセス・カウンター
あなたは
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。