S先生との問答(2)

順番は逆なのだが、以下の問答もあった。文学部卒業生が、必要となれば(あくまで必要な場合に限ってだが)全員このぐらいさらっと言えるようにしておけば、人文系の苦境はぐっと軽減されるはずである。ちなみに以下では略したが、カネや時間をめぐる人文系の苦労も書いた。

(S先生)文学部と聞くと「小説家を養成するところ」 、私も その認識が変わったのは 大学卒業してからです。 東大仏文にいっても太宰治になれない人は みんなポンコツと学生時代は思い込んでました。
(私)英語で文学部の悪口を言われる機会も多分あるでしょうから、阪大HPで文学部の英語の名前をご覧下さい。「小説家を養成するところ」ではなく、「文字を使った(文献の)研究をするところ」だとわかります。つまり「文学の部」ではなく「文の学部」なのです。

(私)ひとつは「国が人間国宝とか無形文化遺産とか芸術祭とかオリンピック選手とかに税金を使うことが許されるなら、文系の学者(の一部)に税金を使うことも許されるはずだ、ということです。たとえば世界で誰も読めなかった古代文字の解読って、すごいと思いませんか。また素人が見ただけではわからない芸術や文化財の「解説者」もいていいんじゃないでしょうか。歴女たちに夢とロマンを提供する仕事もあっていいと思います(それらがすべてビジネスとして採算が取れるわけではありません)。
もう一つ、哲学・歴史や文学には、野放しにしておくと戦争をおこす力があります。社会や国家の安全保障のために税金を使うことが認められるなら、哲学や歴史・文学が暴走しないように、「税金を使って飼い慣らしておく」ことも必要でしょう。
その裏返しの考え方もできます。「実業(実学)」はすべてプラスの富や価値を生むでしょうか。たとえば保険業はプラスの価値を生むのではなくマイナスを防ぐ点に存在意義がありますね。医学もそれに近いでしょう。哲学や歴史にも過去に学ぶなどの手段で、人間社会から失敗の危険を軽減する能力をもちます。

(S先生)日本は自衛戦争ができるべきとも思うし、武器も生産しても他国にうってもいいとも思いますが、  なんか暴走しそうなとこがやや怖い
(私)日本は過去に(言い分はあるにせよ)暴走した歴史をもちますから、再度暴走しないようにみんなが歴史を踏まえて考える必要が大きいと思います。

文学というのは、「言葉による表現はなにがどこまで可能か」を言語学とは違った方法で探求します。人間が言葉を使って生きる限り、その表現の限界を追求することは必要でしょう。ヘンテコな文学はいくらでもありますが、それは「衣服でどんな表現が出来るか」と追求した結果生まれる奇抜なファッションと同じでしょう。ヘンテコなファッションショーがあるからといって、ファッションのデザイン一般を否定することにはなりませんよね。

私はいつも学生に言ってるのですが、「オレがもし母校の京大教授になっていたら、理系に純アカデミズムがわかるか」てなことを言って「霞を食ってでも学問をする」と主張していただろうが、縁あってオレは阪大教員になった。ここは大阪だ。だからオレは役に立つ人文学、儲かる人文学を主張するのだ」ということです。そういうことができる阪大って、とても面白い大学だと思います。

(S先生)私も ひょんなことから大阪に来ることになったので、おなじようなことを近所の教員に言ってます。  阪大や東北大が 東大京大と秀才力で戦ったらたぶん負ける。 野蛮であること 無茶が通ること理不尽である強みを生かしていかないと???

(私)いいですねえ。同志をえた気分です。私の恩師は大学中退で外交官になりそこから学士号なしに大学教授になった人でしたが(京大はそういうことをやるときが強いときですよね)、ゼミや学会で「ホラ」と「野蛮」は褒め言葉でした。

(S先生)多分 非常にコンパクトな現代社会学的 社会科の教科を作り上げないと 総論のない、無意味な各論のアホな暗記教科になりますね、、、阪大以外の帝大さんの理系学生見ても 教養以前の 国際人としての下地 悲しいぐらいダメ。

関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセス・カウンター
あなたは
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR