錦織圭に大谷翔平

かたや全米オープンで決勝進出。
かたや10勝10本塁打。

どちらもたいしたものだ。すばらしい。

まったくすばらしくないのは、2試合連続無得点のマリーンズ。覇気が感じられない。
イーグルスやライオンズとの「熾烈な最下位争い」は、「目が離せない」もとい「目も当てられない」。

ところで今朝の朝日新聞「オピニオン」欄には、東大野球部を指導する桑田真澄氏の長いインタビューが載っていた。理路整然としているが、「目から鱗」なのは野球部(だけではない)を覆う軍隊式・精神主義的指導は、戦前でなく戦後に、軍隊からの復員者が大量に指導者や審判になったことで広がったのだという話。社会史ネタとして授業にも使える。たぶん戦前の日本への西洋スポーツの伝播には、貴族趣味や英米型エリート教育が影響しているから、やたらに軍隊式・精神過ぎにはなりにくい面もあったのだろう。

その他、参考になった点は
・桑田氏が最初に観察すると、東大だから他校より練習せねばと選手たちは長時間練習をしていたが、量が多すぎて体力が続かず、一つ一つを全力で練習できていなかったので効果が上がっていない。そこでまず練習量は多いほどよいという「常識を疑う」ことを教えた。PL時代も優勝後に監督を説得して練習時間を短くさせた結果、「打倒PL」の猛練習をして試合の時には疲れはてている他チームに対して、いつも万全の体調で試合に臨めたので、5期連続甲子園出場ができた。
・球が遅い東大の投手だからあれこれ変化球の練習をしていたが、直球が遅すぎるので何種類変化球を投げようが相手はちっとも怖くない。それより打者が一番打ちにくい外角低めに自在に投げ込めるコントロールの方が重要なのだが、それはちっとも身についていなかった。よく見たら他の長時間練習の陰で、ブルペンでのピッチングの球数は月300球前後にすぎず、そんなことでは自在のコントロールなど身につくはずがない。つまり「学ぶべき技術の選択」ができていない。
・投球術について、野球界には間違った常識がたくさんある。自分は中学時代からそれを疑い、試行錯誤してきた。自分の体を自分で微調整し、思ったところに投げられる技術を身につけることではじめて自信が持てるし、実際に相手を抑えられる。気合いと根性だけでは無理である。長時間練習や非合理的方法という「野球界の常識」をうのみにしていたら、プロで活躍する前に自分はつぶれていただろう。

自分の現状を正確に把握することと、「選択と集中」を教えた、というのは、なにやら某国の文科省が大学に要求していることと似ている気はするが、大学の現状を見ると、文科省のそんなことを言わせてしまう「ツッコミどころ」が山ほどある。
超秀才集団であるはずの東大野球部で、自力では桑田氏のいう「常識を疑う」ことも「正確な現状認識にもとづく練習方法の選択と集中」もできなかったという事実は、そういう日本の学術・教育全体の問題を象徴したものと理解すべきだろう。

***これはもちろん、予算削減、政府によるコントロールの強化など文科省の意図に目をつぶり、そういう大学「改革」に賛成するようなつもりで書いているのでないことは、このブログを今まで見てこられた方にはわかっていただけるだろう。そういう「つぶすための改革」と違って、桑田氏の指導は「強くするための改革」である。両者に共通するのは「限られた力でなにをするか」という発想だが、向かう方向はまったく逆なのである。
***ただし、文科省の「改革」に対して、「資源は無限だ、限られているというのはためにする議論だ」というタイプの、右肩上がりの時代の発想にもとづいた反論だけで立ち向かおうとする人が多いのは、どちらの考えが世の中の多数派であるかは別として、「自分の常識」の枠内でしかものを考えられない人が多いことを示している。

こういう問題を認識し、明晰に言葉で表現できる桑田氏(選手としての実績がないと言うことを聞かない日本球界に対しても、文句を言わせない実績をもっている)に、プロ野球の監督と言わずコミッショナーぐらになってもらえると、日本の野球界もだいぶましになると思うのだが。







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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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