万能の教科書はできません(一部修正)

教科書『市民のための世界史』をおおぜいに読んでいただき感謝に堪えない。コメントもいろいろ集まってきている。
私自身は、日中比較(食文化なども)のコラムが面白かったというコメントがいちばん嬉しかった気がする。

他方、問いの答えがほしいという声も聞いた。本文を要約するだけで答えられるものや、逆に正解のない問いもあるので、解答を教科書に挟み込むなどの方法が必要だとは考えないが、HPに考え方の手引きや注意点を載せるなど、別のやり方はあってもいいだろう。その他、この本を教えるための手引き・解説がたっぷり必要なのは、再三述べてきた通りである。

また、従来の歴教研の取り組みを見ていれば出ないと思われるコメントもあるが、1冊の本にした以上、それだけ読んで批評するコメントが出てくるのは避けられない。

たとえば、「問いかけの数も少なく、アクティブ・ラーニング用になっていない」。これは阪大歴教研の性格をご存じないのかもしれない。われわれは「新しい教え方を広めるための教育系の研究会」ではないことは、何度も何度もことわってきたところである。「新しい教育」は「新しい教育法」とイコールではない。逆に意地悪な言い方をすれば、今までの暗記教育(入試が済めば忘れてしまう)よりすぐれた、生きていく力になる教育法で、「間違った/古い中身」を教えたら大変なことになる。
もっとも、この教科書はあくまで、大学教養課程の15回の授業用の教科書で、章ごとに複数の大きな問いを立ててあるので、その意味では問いの数は少なくない。高度教養教育の「市民のための世界史S」では部分的に、調べ学習+ディスカッションの授業をする予定である。

「難しすぎる。読みやすいような見開き2ページぐらいのトピックを並べるのはどうか」というご意見もあったが、これは明らかに、「別の課題」であろう。

総じてこれは、既存の教科書の枠組みの中でのスーパー改良版だという指摘は、まったく正しい。われわれが目指したのは、まさにそれである。こういうものがどこにもない状況で、新しい教育法や関心を引きやすいテーマ別特集などを先行させることには賛成できない、というかそういう仕事はほかでやるだろうから、われわれが今やらなくてもよい(皆さん先にどんどんやってください)、日本中で他の誰にもできないのはこういう教科書だ(できるものならだれか作ってごらん)、というのが阪大歴教研の考え方であることを、あらためて強調しておきたい。
繰り返すが、この教科書は A World History for Citizensであって、唯一ないし万能のThe World History for Citizensではない。




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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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