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新連載「日本標準の立ち位置 ガラパゴス的進化の半世紀」

名古屋に往復する新幹線の中で、今月号の『鉄道ジャーナル』をあらかた読むことができた。
JRグループの3月ダイヤ改正の記事は、JR四国の珍列車「予土線3兄弟」が目立つ程度でパンチが弱かったが、それ以外は面白い記事が多かった。

上記の「予土線3兄弟」や三陸鉄道の全通に関する記事以外にも、ローカル鉄道の記事に読み応えがあった。明治期に9年間だけ奈良を走った通称「大仏鉄道」は名前だけ聞いたことがあったが、その歴史や遺構の調査が進み、探訪ツアーが増加しているという記事が出ている。ほかにも岐阜の明知鉄道の現況、旧広尾線と襟裳岬のバス路線~日高本線をめぐる「日本縦断ローカル線 北海道周遊編5」など。

海外の鉄道に関する豊富な情報は、この雑誌の特色である。
土方まりこ「競争下におけるドイツ鉄道の貨物輸送事業戦略」は世界的ロジステッィク企業を買収することで「一国内の貨物輸送会社」の地位を脱却しようとしたドイツ鉄道の状況。

橋爪智之「ロンドン発欧州鉄道通信 2014/06」は、上の記事とも共通なオープンアクセス化を徹底させ、長距離列車だけでなく通勤電車でも同じ線路を複数の会社の列車が違う運賃で走るという状況のルポ。起こっているのは「慣れない路線を利用する際にも自己責任で、スマホなどには示されない諸情報を処理して乗る列車を選ばないとひどい目に遭う」状況だそうだ。「競争原理主義」の「ホッブズ的帰結」だろう。海外ニュース欄には、英仏海峡を通る「ユーロスター」もイギリス側の不便さから乗客が予測通りに増えていないという記事があった。

ヨーロッパの明るい面を示すのは、佐藤栄介・塩塚陽介「日本への導入検討が進むCitadisに乗車 トラムT3線 à Paris」というパリのLRTの記事。2020年までにパリで計10路線、100㎞のトラムネットワークが完成する予定だそうだ。
そこに使われているアルストム社のCitadisは、日本のテレビや雑誌にもよく出てくる代表的なヨーロッパの新型の路面電車で、日本への売り込みのマーケティングも進められているとのこと。日本の各都市に、先日のブログでも紹介した国産の「リトルダンサー」(アルナ車両)やCitadisが競争で導入される状況を想像すると、わくわくする。

川辺健一「テルマエ・ロマエと技術」は技術屋さんのエッセイで、人気漫画(映画)で描かれた日本の銭湯のあれこれを古代ローマの浴場に導入する話をマクラに、日本の鉄道技術がかつて先進諸外国の技術をどう取り入れたか(真似たか、盗んだか)を紹介する。日本では現代中国を「コピー大国」と批判するが、日本もかつてそうだったし、またコピーにも一定の力が必要なのだという論には説得力がある。

同じく技術の話の新連載が辻村功氏の「ガラパゴス的進化の半世紀」である。
実例は今後のお楽しみ、というところだが、日本の鉄道の技術やシステムについても、「すべてにレベルが高いがそのままでは世界に輸出できない。しかも日本の業界は、相手の必要や趣味に合わせて一部をレベルダウン(=値下げ)したり装いを変えるという発想や能力に欠けている」という、「日本の歴史学界は」に置き換えてもそのまま通りそうなことを書かれている。

その問題と通底する話が、「編集後記」に書かれている。
編集長がたまたま通りかかった駅(たぶんJRの)で、トラブルのための運転見合わせと地下鉄への振り替え輸送の案内をしていたが、聞き取りにくい音声で、内容も振り替え乗車とは何か、どういう手続きでするものかを言わないし、どこへ行くにはどの路線に乗り換えたらいいかを知るにはどこで訪ねたらいいかも言わない、あげくは「入場」「出場」などの業界用語(改札口を入ったり出たりすること)を使う、などなど、「その路線に慣れていて鉄道システムや周辺鉄道網にも詳しい乗客」以外にはまったく無意味なアナウンスを繰り返すだけだったという。

要するに、「自分の専門について自分の枠の外にいる人に伝える能力」がまったくないということだ。
大学の専門教育も、そういう「人材」を大量養成している。
日本語の下手な外国人と話す際にも、大半の日本人が、スピードはゆっくりと、しかしそういう外国人にわかるわけがない業界用語や専門用語はそのままで話をする。
だから、インドネシアやフィリピン出身の看護士も日本の採用試験に合格しない。

こういいう話まで出てくる「鉄道雑誌」は、「鉄オタ」でない大半の日本人が想像できない社会性や国際性をもつのだ。

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プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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