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『市民のための世界史』用語の表記法

この教科書は、何度も言ってきたように「まず盛り込むべき<重要語句>をリストアップし、それを並べて文章化する」という方法を採っていない。読み手にも、「どの語句を覚えるべきか」などという読み方をされては困る。

別の意味で、語句や事項の表記・書き方についてはあれこれ考えた。
その前提は、カタカナという不完全な文字を用いて、しかも文脈抜きでの完璧な表記統一などありえないということである。もうひとつ、この教科書は「高校世界史の暗記をなったくしていない学生」が主対象だから、「これまでの教科書と違った書き方をすると戸惑うのではないか」という懸念は無用である。

そのうえで
1)高校教科書独特の表記法より新聞・TVで通用している呼称に合わせた場合も多い。
例として、国際組織名は必ず日本語でフルに書くのでなく、通用しているローマ字略称で書き初出箇所にはカッコ内に日本語フル呼称を併記する・・・NATO(北大西洋条約機構)、PLO(パレスチナ解放機構)、ASEAN(東南アジア諸国連合)など。

ただし「ローマ法王」とは書かない。やっぱり「ローマ教皇」である。なんでも新聞・TVに合わせたわけではない。

2)カタカナ表記も無理に「現地語表記」をせずに読みやすい慣用表記に合わせたものが少なくない。
例:ヴェトナム→ベトナムは何度となく説明してきたが、ほかにもパレスティナ→パレスチナ、東ティモール→東チモールなどと書いた。

3)他方で、おかしなカタカナや略語が通用しているもの、日本でしか使わない言い方などは、なるべく正確な表記・翻訳や現地での用語に合わせた。
例:アケメネス朝ペルシアという何語だかわからない表記は、遠慮せずにハカーマニシュ(アカイメネス)朝ペルシアと書いた。「ピューリタン革命」のように、17世紀のイギリス内乱について書いて「日本でいうピューリタン革命」とカッコ内に説明を補った例もある。


4)常用漢字以外の漢字や、字そのものは易しくても複数の読み方がありうる漢字人名などにはかなり親切にルビを振った 。教科書や「一般書」「概説書」でも、こういう配慮をしている書物は多くない。

5)ゴチック体は本文と注(用語や概念の説明にコラムとともに多用)にかなり多めに使用したが、これは用語集頻度には一切関係ない。むしろ歴史の基礎的術語と「現代用語の基礎知識」にはことごとくゴチックを用いた。

6)文章での説明だけでわかるところで固有名詞をあげる(特に、わざわざカッコ内に「暗記用の用語としての言い方」を併記する)やりかたは、極力回避した。他方、説明なしで用語だけ使用することもしないようにつとめた。
例1:日中戦争の説明で「東南アジア大陸部の英仏植民地から重慶へ伸びる支援ルート」というところに「援蒋ルート」の語は併記しない(実は地図にあるが)。
例2:戦争や条約の結果、獲得したり失った地名の列挙、文学や芸術の作品名列挙などはしない。

7)ピンポイントの年代はなるべく書かずに済ませるし、人名に生没年や在位年、国家・王朝名に成立・滅亡年などを機械的に添えることもしない

こういう書き方をした理由をひとことで言えば、「教科書(それも世界史)だけの書き方に慣れさせるよりも、新聞・TVや一般書が理解できることのほうが大事だ」ということである。新聞・TVはともかく、一般書の場合には表記に幅や揺れがあることはいうまでもない。一字一句ちょっとでも違ったら理解できなくなるようでは、一般書は読めない。ムリヤリ広げて言えば、それでは十分な知的レベルをもつ「市民」にはなれない。
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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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