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岩波講座日本歴史の月報に書いた拙稿

『岩波講座日本歴史6(中世1)』の月報に書いた拙稿「私の日本史賛美と日本史批判」について、
「蝉丸のブログ」
http://ameblo.jp/semizou/entry-11750023187.html
で取り上げていただいたのにいまごろ気づいた。感謝。

これはもちろん私が売り込んだ原稿ではなく、編集部から書いてくれと頼んできたので、「日本史に対する毎度の悪口」が多数の岩波講座の読者の目に入ってしまったのは、編集側の責任である(笑)。

前半に書いた日本史学界への賛美は、「褒め殺し」でもなんでもでなく、私が史学概論や歴史教育、海域アジア史等の場で力説してきたところである。蝉丸氏がそこもきちんと取り上げてくださったのはうれしい。

そのうえで後半の日本史学界への批判も的確に紹介されている。
ただ、いつもの悪い癖で揚げ足取りをすると、私や東洋史学のことをよく知らない読者が蝉丸氏のブログだけ読むと、倭私が「中国史中心の東洋史学」を背負って日本史批判をしているように読まれるおそれが、いくらかあるように感じた(そこまで蝉丸氏の責任に帰するというのは行き過ぎだろうが)。

たとえば、日本史独自の古代・中世・近世・近現代という時代区分が大学の教員ポストに結びついて絶対化している点を私が指摘したのに対し、蝉丸氏は「これは日本史だけに限った話ではなく、東洋史学と言いながらもその実ほとんど中国史学である某学界においても思い切り当てはまる事実ではあるまいか」と返された。が、これは実際の主要大学について、東洋史の教員の専門を見ていただけば、旧帝大でも(K都大学以外は)もうそういうポスト配置になっていないことがわかるであろう。そもそも人文系学部における中国史の教員ポストは2つしかないところが多く、それを「前近代1/近代1」と割り振るのが関の山であって、日本史のように絶対的な「古代」「中世」「近世」といった区分は、(かりに時代区分論争がいずれかの意見の完全勝利で終わったとしても)設定のしようがないのである。

またそもそも、東洋史イコール中国史という組織の仕組みがかりに存在したとすると、それは私が(阪大の場合は中央アジア史との共闘のもとに)口をきわめて罵倒する対象になることは、阪大の近くではよく知られた事実である。

なお蝉丸氏はブログの最後で、著者(桃木)の本意とは関係ない「暴言」「言い逃げ」と断った上で、「東アジア」という概念を「東部ユーラシア」に置き換えるべしという桃木の意見は日本史だけでなく東洋史でも適用すべきだと書いておられる。ただそこには、もとの私の書き方が不用意だったせいか、やや重要な論理的混乱が見られる。

蝉丸氏も言われるとおり
(1)従来の「東アジア」という言葉には中国中心主義、日朝中だけ見てそれ以外を無視するなど多くの欠陥がある。
(2)その点で「東部ユーラシア」のほうが適切である。
ここまでは私も賛成である。
だが、私は「東部ユーラシア」が万能だとは思わない。歴史学の方法論として万能の地域設定があるとは考えないからである(この点で、私の発言が中央ユーラシア史に中心を置く最近の東洋史学界を代表しているわけでもないことがわかるであろう。要するに私は、既存の東洋史学界を代弁してはいない)。
(3)東部ユーラシアの提唱者にも政治的な戦略があり、それをニュートラルな観念だと見なすのはナイーブにすぎる。
とくにその一部に「中国史にかわって中央アジア史が東洋史の中心になるべきだ」という史観があり、それがときに「強い者が偉い」(だから前近代の日本や東南アジアなどどうでもよい)という態度を露呈する点は、私がつとに批判してきたところである
(4)歴史学は客観的な状態だけを研究する学問ではない。たとえば儒教世界や漢字文化圏の人々が共通に抱いてきた偏見も研究対象だし、現代の地域統合やナショナリズムの背後にある歴史認識も研究対象である。「東アジア」を「禁句」にして、それらを研究する際の地域区分ができるだろうか?

つまり私の考えは、「東部ユーラシア」と「従来の研究者側の視野の偏りを克服した東アジア」を使い分けるしかないというものである。そのため、もし日本史の皆さんが「なんでも東アジア」から「なんでも東部ユーラシア」に変わるだけだったら、私の日本史批判は将来もやまないであろう。









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プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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