ベトナム調査あれこれ

90年代からほぼ毎年、ベトナムにグループで調査に行っている。
今回も大学教員3名のほかポスドク・院生など計9名での調査だった。
バッコック村調査のような特定地域の調査と、今期の科研のような交通ルートに沿った広域調査とでは動き方ややることが違う。

特定地域調査にもバッコック村のような完全定点調査と、その後のナムディン省各村落の調査や「莫氏科研」の莫氏の子孫が住む村落の調査などある地域(たとえば省とか県)の村落をつぎつぎ訪問するタイプがあったが、どちらも村に入るのは原則として午前中だけで、午後はホテルでデータ整理や日誌の作成にあたる。どのタイプの調査でも必ず省の文化スポーツ観光局または博物館、遺跡管理事務所などの幹部が同行することになっているせいもあって、宿は原則として省都にとる。

広域を移動する調査の場合、午前と午後で別の遺跡などを訪ねるのが普通である。データ整理と日誌作成は夕食後になる。今回もそれがけっこうしんどい(夕食にたっぷり飲んでしまったりすると...)。それぞれの省の幹部が同行する点は同じだが、省都から離れた場所へ行く際など、今回のように省の下(日本の郡に相当する)の単位である県の中心の町に宿泊することも少なくない。その場合、宿の設備はどうしても省都のホテルより落ちる。今回は県の中心でネットが通じたりエアコンの暖房が使える宿があったので感動したわけである。

ベトナム語があまり/まったくできない院生や学部生にも、調査中の役割はある。
たとえば碑文とか書物などの史料を現場で写真を撮ることがよくある。家譜などの冊子をその場で1頁ずつめくりながら撮影する(複数冊同時に出てくることもよくある)、廟や寺の内部の扁額とか釣り鐘、対聯などを片端から撮影するといった仕事は、何人かで手分けしてやる方が早い。博物館で遺物の撮影を許可してくれたような場合も、多数あれば手分けして撮影する。また古老からの聞き取りなどの場合は、あとて記念撮影するのはもちろんだが、ベトナム語のできるわれわれが聞き取りをしているシーンを、学部生に撮影してもらうようなこともたびたびあった。
また、ベトナム語ができなくても、村の子供やおばあさんがいろいろ話しかけてくる。身振り手振りでその相手をすることも、大事な仕事(かつ学生の訓練)だ。ときには写さねばならない遺物の前で子供たちが邪魔をするようなこともある。邪険に追い払うなどはルール違反だ。

山の中腹にあるタイー族の首長の墓。分担して墓石の文字などを調べる。
DSC_7546.jpg

華人の子孫の家。案内役の村も幹部に対するものも含めいろいろ聞き取りをする。
DSC_7920この家


ベトナム語のまあまあできる院生などには、移動中に何時何分にどこを通った、遺跡には何時何分に着いて何時何分にそこを離れた、といった時刻の記録係を任せる。全員がフィールドワーク用の手帳を持っていて(桜井先生に『緑色の野帳』というエッセイ集があったっけ)、なんでも書き留めるのだが、あとで日誌を作る際には、細かい時刻の記録が大きな意味を持つので、責任者を決めておくのである。

こうして各自が撮った写真を団のハードディスクに集めるのだが、まず各自でキャプションを付け、必要な場合には「X碑文」「A寺」「B遺跡」などフォルダに分けておかないと、なんだかわからなくなってしまう。団で集める方法はいろいろありうるが、われわれは1日ごとに日付を名前にしたフォルダを作り、その中に撮影者ごとのフォルダを置く。本当はそこで同じものを別人が写した写真などをつきあわせて、文献の場合は漏れた頁がないか確認する、碑文の場合はワープロで打ち込んでしまうなどの作業をすべきなのだが、夜に写真整理をする場合はそこまでできないことが多く、帰国後もそのままウヤムヤになることがある。

同様に、主なメンバーの手帳をもとに日誌を作る。たくさんの場所に行ったり、聞き取りのメモが合わない場合などには時間がかかる。大きな寺院や廟で手分けして撮影や聞き取りをした場合なども、だれがなにをしたかがうまくまとまらないことがある。

帰国後に、これに必要な整理を加えて、写真と日誌の両方の電子ファイルを参加者全員に配布する。史料などのコピーを入手した場合も同様である。費用の精算、ベトナム側関係者へのお礼などとは別に、調査をしたらこういう事後の作業が欠かせない。


関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセス・カウンター
あなたは
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR