ドイツにおける地域公共交通に対する財政支援

最近、鉄道の記事を書く機会が全然なかったが、先月の鉄道ジャーナル誌には、土方まりこ氏(一般財団法人運輸調査局調査研究センター)が表記の記事を書いており、とても参考になる。

日本以上の人口減少と高齢化が進んでいるドイツで、一般の鉄道近距離輸送客と、地下鉄・軌道(LRT)・バスなどの公共近距離道路輸送の両方が、2000年以降に乗客を増やしているのだそうだ。

その秘訣は、
・地域公共交通はそもそも独立採算が不可能な事業として位置づけた上での、連邦(2012年には円換算で1兆円以上!)や州・下位自治体による手厚い財政支援(ガソリン消費などのエネルギー税収を充当)
・ゾーン運賃やシームレスな乗り継ぎなどの利便性の高さ
などにあるようだ。

日本では公共交通機関を独立採算が当然とするような風潮が根強く(そうなった一因には、自動車会社の圧力でそういうモデルを採用し鉄道をつぶしてきたアメリカの影響もあると言われる)、電鉄会社が副業で儲けるような特殊なモデルの成立もそれを後押ししてきたが、EU諸国やアメリカの一部の都市圏では公共交通機関を税金で支えるのが当然になっている。その点、何度も書くが日本は完全に時代遅れである。

もう一点、日本でもようやく交通系カードの共通化はできたが、ヨーロッパで普及しているゾーン運賃制(都市圏の一定範囲内では、国鉄、市営地下鉄、民営バスなど異なる企業体でも、同じ企業体の路線を乗り継いだときと同じように運賃が通しで計算され、別の会社だからといってそれぞれ別の運賃を払う必要がない)がなぜか断固としてやろうとしない(雀の涙ほどの金額の割引は一部で存在するが)。これだけカードとコンピューターが発達しているのだから、そうしても企業体ごとの運賃の配分計算ができないはずはないのだが。

もうひとつ、別の路線に乗り換える際の乗り継ぎが、日本は運賃が別々に計算されるだけでなく、長い長い通路を歩かせるなど、物理的に不便である。パリで別々の路線の地下鉄の列車が同一ホームに入ってくる、ドイツでは電車とバスが同じホームの反対側に止まりほとんど歩かずに乗り換えられるなど、ヨーロッパでできることが、日本ではほとんどできない。

これらの多くは、昔はどこでも同じだったのだが、ヨーロッパやアメリカで改善が進み、その影響がアジア新興国にも及んでいるのに対し、日本がすっかりガラパゴス化している例である。とくにゾーン運賃制や乗り継ぎのシームレス化ができないというのは、「日本人らしいきめ細やかな気配り」などという観念がしょせん幻想にすぎないことを示しているのではないかと言いたくなる。


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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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