死語になった「郡部」

8日の東方学会のシンポは、日頃アカデミックな活動に徹している会にもかかわらず、報告側・聴衆合わせて約40人と、思ったよりはたくさんの人が集まってくれた。
報告1の石橋先生の高校の状況と、神奈川の夏の研究会の紹介、報告2の向君の、阪大東洋史の研究者育成法を同志社の新学部の紹介を含めた話は、けっこうインパクトがあったのではないか。

大西信行さんのコメントで面白かったのは、私の趣旨説明でふれた(東アジア史の不人気の背景のひとつである)漢文的素養の解体に関する話。勤務校で(漢の)「群県制」「群国制」と書いた生徒がペケにされて「採点ミスだ」と講義したという話。つまり「群」と「郡」が別の漢字だと認識できていないということ。背景はおそらく「郡」という行政単位の意味の消失と、「郡部」に住む人口の激減らしい。
阪大でもテストをしたら、やっぱり区別できない学生がたくさんいるだろうな。

佐藤先生の、歴史の好きな高校生を進路指導で文学部史学科だけに生かせるのは正しくないこと、日本の大学に歴史学部がないことの問題点などのコメントも聴衆の刺激になったようだ。

合山林太郎さんの江戸時代に漢文へのいろんな入り口があったこと、明治20年代からインテリも漢詩を作らず読むだけになったことなどの話も面白かった。阪大でゼミでの輪読はあきらめて、2人1組にして毎回1種の漢詩をその場で調べて読ませるという方法にしたという話は興味深いものだった。

キム・ミンギュさんの、韓国での東北アジア歴史財団設立の経過と、高校科目「東北アジア史」の考え方、それに現政府が高校韓国史を国定教科書に戻そうとしている話なども、聴衆の関心を引いたろう。

討論では、北海道から駆けつけてくれた橋本雄さんの、阪大プログラムは欲張りすぎで、どこに焦点を当ててどういう形を作るかを示してほしいという指摘について、じゅうぶん議論できなかったのが申し訳なかった。
司会の三谷博さんを含め、皆さんに感謝、感謝である。

この続きは来年9月の史学会125年記念シンポin大阪などで議論したい。

閑話休題
中国山西省の爆発事件容疑者の住んでいた自宅のあるアパートについて、毎日新聞の特派員が「閑静なアパート」と書き出しておいて、そのあとで「自宅周辺では道路やマンション建設が急ピッチで進められ、昼間は激しい土ぼこりに見舞われる。劣悪な住環境も、容疑者が地元当局に不満を募らせる一因となった可能性もある」と書いている。あれれ、劣悪な住環境の閑静な住宅街って?
どうも記者は「閑静」ということばを「わびしい、オンボロの」といった方向に誤解しているのじゃないかという気がしないでもない。これが的外れな勘ぐりでなければ、新聞記者の漢字力低下も相当なものだ。

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ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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