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「大阪都」に向けた住民投票に関する規定と広域行政の必要性

弁護士のUさんが、提案されている「住民投票」について、以下のように教えてくれた。

>大都市地域における特別区設置に関する法律というのが根拠法律です。
要するに大阪市をいくつかの特別区に分けて大阪市が消滅するというだけのことを定めていますので、住民投票は大阪市民のみです。
大阪都構想は、構想ではありますが、法律上のことばではありません。
特別区とは何か、地方自治法に定めがありますが、現在では東京都にのみ設置されています。
いちおう地方自治体です。但し他の地方自治体と比較して、権限は弱いです。
東京市が東京都になったのは、戦争中に首都防衛上権限を強化する必要があったためで、戦後もそのまま残っているだけです。東京の場合でも特別区についてはいろいろ問題点が指摘されています。
大阪市がなくなって4つや5つの特別区ができても、東京のようにはすぐになりません。規模が小さすぎます。東京都のようなものをイメージするなら、堺や東大阪その他ほとんどの周辺の自治体も特別区にしていく必要があります。ところが、前記の法律によれば、特別区と隣接する自治体については、議会の決議のみでOKとされていますので、そのときには住民投票は不要です。たとえば、住民投票なしに豊中市は廃止され、特別区にされます。
したがって、大阪市以外でも住民投票をすべきだという声も、かなりあります。しかし、立法当時はあまり議論されなかったようです。そもそも特別区設置法はあまり注目されずにできたもので、法律制定時にはあまり議論されなかったと思います。自治体を合併するときの法律をまねしてつくったような簡単な法律です。
というようなことで、住民投票は大阪市民のみということになっています。

これは知らなかった。
いずれにしても、「東京のようになりたい」といういじましい根性が支持できないのは、全く変わらない。
ここまで東京に精神的に支配されているとは救いがたい(難しい言葉で言う「内面化された隷従」)。こんなやり方では永遠に東京に追いつけないどころか、神奈川や愛知に付けられた差も広がるし、京都や神戸の人々にもますます馬鹿にされるというのが、どうしてわからないのだろうか。

ただ同時に、広域行政の必要性を認識しない反対論が無力であるという点でも、私の意見は変わらない。
必要性の最たるものは外国人への多言語・多文化対応だ。いま必要なのは英語・中国語・韓国語だけではない。ベトナム語、タイ語、インドネシア語、ネパール語...多数の言葉が必要だ。小さな自治体でその要員を揃えるのはもちろん不可能で、阪大外国語学部のような専門家のプールと連携しながら、必要な場所に必要な通訳・翻訳者や各種の指導員等等を送り込む体制を作らねば、新入管法と外国人労働者受け入れも、また外国人観光客への対応も、十分できないことは明らかだ。問題はそこで、自治体側が小さすぎると、広域の司令塔や連絡調整役がどこにもおらず、適切な通訳派遣の依頼や監督ができないということである。それを放っておくと、使われる通訳側も低賃金でトンチンカンな使い方ばかりされることになるし、通訳や翻訳を依頼した結果も、「堺筋がサカイ・マッスルに化ける」のと大差ない事態に陥る(現にそういう例は簡単にみつかる)。なぜ「自動翻訳」と「日本語のできる留学生に丸投げ」や「英語の出来る市民のボランティア」だけではダメなのかを想像もできない職員しかいないような小さな自治体に、通訳・翻訳を伴う業務を任せてはいけないのだ。それは大型の免許を持たない人間にトラックやバスを運転をさせるのと、それほど違わない。




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近世史フォーラム4月例会

木下光生さんがやっている研究会。日本史だけでなくいろんな人を呼んでおり、今回はうちの吉川君が報告。いつも元気な会だ。

【近世史フォーラム4月例会のご案内】(再送)
◇日時:2019年4月19日(金)18:30~20:30
◇会場:大阪市立北区民センター 第5会議室
    https://www.osakacommunity.jp/kita/access.html
◇報告:吉川和希氏
   「18~19世紀前半のベトナム北部山地における軍政と在地首長
     ―諒山地域を中心に―」
 〈参考文献〉
  吉川和希「17世紀後半における北部ベトナムの内陸交易―諒山地域を中心に―」
       (『東方学』134、2017年)
  岡田雅志「タイ族ムオン構造再考―18~19世紀後半のベトナム、ムオン・ロー盆
地社会の視点から―」
       (『東南アジア研究』50-1、2012年)
      「近世ベトナム国家の異民族観の変容と越境者―内なる化外たる儂人を
めぐって―」
       (『待兼山論叢』史学編50、2016年)
  武内房司「デオヴァンチとその周辺―シプソンチャウタイ・タイ族領主層と清仏
戦争―」
       (塚田誠之編『民族の移動と文化の動態』風響社、2003年)

グローバルヒストリーの入門書2点

山下範久さんが編んだ『教養としての世界史の学び方』を先日やっと読み始めた。やられた感の強い好著だ。こういう本(市民向けの歴史学の入門書)を前の科研の成果としてちゃんと出していれば、阪大歴史教育の科研が落とされることもなかったんじゃないかと反省。
そこで負け惜しみとして2つ悪口を書いておこう。その1。ビジネスマンの教養書のようにも書いているが、そもそもこの本が理解できる基礎教養を持っているビジネスマンが多数派だったら、日本社会はこんなにひどくなってないだろう。そういう感覚を欠いた「男性ビジネスマン(特に中年の)の価値観」が日本社会を支配し、出版企画もそういう男性に売れそうかどうかで判断する風潮が、明らかに日本をダメにしている。そもそも人口比から言って、男性ビジネスマンは国民の多数を占めていないだろう。
その2。はじめの方で山下さんが、近代ヨーロッパが作り出した強者中心の枠組みを共有したままでいくらヨーロッパ中心史観を批判してもダメだよと書いてるのに、それをやってる著者がいること。

もう1冊、3月の愛知世界史研究会等で取り上げられている(阪大歴教研も6月に著者をお招きしている)北村厚さんの『教養のグローバルヒストリー』。これは現在の高校世界史B教科書が、枠組みが古いためにみんな気づかないが、実は組み替えをすればこれだけグローバルヒストリーを踏まえて書いてあるんだよ、という本。発想が良い。
ただしドイツ史専門の著者ゆえ、個々の記述はアジア史や日本史など間違いもある。これを「だからダメだ」とやっつけるのでなく、みんなで協力して細部の不正確さを正していく方向で、この本が活用できたらすばらしい。なお著者はこの本を使った所属大学の授業で、学生に問いを作らせその出題意図まで書かせているそうだ。中学や高校で歴史の新しい教え方をする教員のトレーニングとして素晴らしい。6月の阪大の例会でその話も聞けるのが楽しみだ。

大阪大学歴史教育研究会 第120回例会のお知らせ

さて、準備が大変だ。センターのプレテストの面白い問題の紹介以外に、3月末の愛知世界史研究会での討議も引きついで、思考力を問う問題や論述問題で「なぜ」「どのように」だけでなく「いつ」「だれが」「どこで」「なにを」などを問う可能性についても話さなければならない。

【大阪大学歴史教育研究会 第120回例会】
 日時:2019年4月20日(土)13:30~17:30
 会場:大阪大学豊中キャンパス文学研究科本館2階大会議室

【1】堤一昭(大阪大学大学院文学研究科教授)
「大阪大学歴史教育研究会2019年度活動方針」

【2】桃木至朗(大阪大学大学院文学研究科教授)
「入試改革を考える」

(要旨)高大連携歴史教育研究会やその他の学会、各地の教科研究会などで、「大学入学共通テスト」のプレテスト問題などを中心に、入試改革の検討が進められている。本報告では、出題する大学側の視点に注意しながら、プレテスト以外に国公立二次・私大入試も視野に入れて、思考力・判断力や表現力を問う入試問題の出題方法について検討する。「多人数を一度に採点する問題でもそれなりに問える思考力や判断力」にどんなパターンがあるかを中心に、それと記述・論述問題などを組み合わせる方法(問いの連鎖にもとづく日常の学習を反映するような出題)の可能性についても論じたい。

東南アジア学会関西地区例会のご案内

今回は阪大開催。

2019年4月27日(土)開催の東南アジア学会関西地区例会の御案内をお送り致します。今回は海域アジア史研究会との共催で、下記の通り開催致します。多くの方の御来場をお待ちしております。
日時:4月27日(土)14:00-17:15
会場:大阪大学豊中キャンパス文法経済学部本館2階 大会議室アクセス:http://www.let.osaka-u.ac.jp/ja/access ※豊中キャンパスマップ④の逆向き「コの字」型建物が会場のある建物です(大会議室は左上隅に位置します)。大会議室には、③の総合図書館側の入口から入って、右手の階段をあがり、廊下を右側にお進みください。階段手前の右側の部屋が会場の大会議室です。共催:海域アジア史研究会
第一報告(14:00-15:30)
発表者:鄭美景(花園大学大学院文学研究科博士後期課程)
発表題目:近代ベトナムにおける禅宗寺院の経典について―東南アジア地域研究研究所所蔵の在泰京越南寺景福寺所蔵漢籍を中心に―

発表要旨:
本発表では、東南アジア地域研究研究所所蔵の在泰京越南寺院景福寺所蔵漢籍の分析を通して、ベトナム、および日本、中国、韓国の大乗仏教文化圏における近代仏教経典のもつ特徴を述べる。近代大乗仏教文化圏では、衰退していた仏教が、カトリック、キリスト教といった宗教を含む西欧列強勢力の進出以来、仏教復興運動がある程度成功をおさめており、旧景福寺所蔵漢籍は重要な一例であると言える。例えば、漢喃の六八体長編詩の形態を整えた『阿弥陀経』をはじめ、『釈氏源流』、『報恩経』、『六祖壇経』などは、当時の中国や韓国で見られる禅浄一致や、儒教的性格を表している。この字喃というベトナム独自の表音文字は、日本の仮名、韓国のハングルのように近代的教育の導入により仏教運動の大衆化に貢献した。さらに、バンコクの華僑地区にある景福寺の地政学的位置からも、印刷技術の発達による経典の輸入や、編纂、そして近代仏教学の受容などが見え、大乗仏教文化圏の相互交流の流れも窺える。
第二報告(15:45-17:15)
発表者:上砂考廣(大阪大学大学院国際公共政策研究科博士後期課程)
発表題目:東ティモール レネティルの抵抗運動―紛争下におけるナショナリズムの機能に関する一考察―

発表要旨:本研究は、東ティモール独立紛争のおける「新世代」(Geração Foun)と呼ばれる東ティモール人の若者たちの抵抗運動に焦点を当てて、紛争下におけるナショナリズムの新たな機能を明らかにする。1990年代インドネシアにおいて当該国の民主化運動と東ティモール独立運動が連携し、共同デモを展開するという現象が見られた。少なくとも1990年代に入るまでは全く異なる運動として理解されてきたインドネシア民主化運動と東ティモール独立運動という異なるナショナリストの運動が、1990年代に入り連携するようになったのはなぜか? 東ティモール及びジャカルタでの現地調査を基に、東ティモール人たちの地下抵抗組織レネティル(RENETIL)がインドネシア本土で展開した思想運動「東ティモール独立紛争のインドネシア化」を分析することで、東ティモールの若者たちがインドネシア人とは異なるネイションを志向しながらも、彼らと共通の政治空間を創出したことを論じる。

日本マレーシア学会関東地区研究会 のお知らせ

日本マレーシア学会関東地区研究会 2019年度第1回研究会

〇スケジュール
・日時: 5月19日(日) 14:00~17:00
・会場: 立教大学池袋キャンパス 本館1階 1103教室
http://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro/qo9edr00000001gl-att/img-campusmap_ike.pdf

・テーマ: 「マレーシアとシンガポールにおける上座仏教の展開: ネットワ
ークの観点からの考察」

〇報告者
・黄蘊(尚絅大学)

〇報告要旨
東南アジアの上座仏教徒社会であるミャンマー、タイなどでは仏教が共同体的慣
行や地域文化と深く結びついている。仏教は人々の生活様式、共同体的規範であ
り、政治や社会生活全般も仏教と密接な関係を有することが観察される。一方、
マレーシアとシンガポールは上座仏教展開の新天地と位置付けられる。この二つ
の地域における上座仏教の歴史が相対的に浅く、また仏教信仰においては大乗仏
教が主流で、上座仏教信者は少数派となっている。スリランカ、ミャンマー、タ
イをもととする仏教宗派、それぞれの上座仏教施設・実践方式が競合的に共存し
ていることがマレーシアとシンガポールにおける上座仏教のあり方の特徴である。
もう一つ重要な点は、この両国において、上座仏教に関する中央集権的な管理や
統一した制度が存在しないことである。このように、上座仏教にまつわる地域的
伝統や歴史的文脈が相対的希薄という状況の中で、マレーシアとシンガポールに
おいては知識や実践としての(上座)仏教の存在が大きい。英語が主な媒介言語
であることも上記両国における上座仏教展開の重要な特徴である。なお、マレー
シアとシンガポールの上座仏教はほぼ同じ歴史的文脈の中においてその展開が遂
げられ、この両国の上座仏教僧侶、信者間の交流、連携もかなり緊密に保たれて
いる。
マレーシアとシンガポールでは、タイ、ミャンマー、スリランカのそれぞれの仏
教宗派をもととする寺院、上座仏教センターが競合的に共存している。現地人の
上座仏教僧はそれぞれの宗派のもとで受戒し、実践している。このような上座仏
教の宗派・系譜を媒介にできた国内外のネットワーク、連携は両国の上座仏教の
展開において重要な意義をもってきた。本発表は、マレーシアとシンガポールの
上座仏教寺院や上座仏教関係者と国内外のタイ、ミャンマー、スリランカ系の僧
侶・仏教関係者との交流、ネットワークの構築に注目し、それらがどのように作
用し、どう今日のマレーシアとシンガポールにおける上座仏教の展開、前進に寄
与してきたのかを考察する。

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報告90-120分、コメント30-60分ののち質疑とゆったり時間を取り、十分説明、
議論できる場です。国内外を問わず発表されたい方が居られれば、自薦でも他薦
でもご一報下さい。

Facebookでも研究会情報を発信いたします。
Facebookグループ https://www.facebook.com/groups/jamskanto/


投稿者・問い合わせ先: 福島康博(fukushima(a)aa.tufs.ac.jp)

プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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