自分はいまどういう土俵の上で歴史を語っているのかを言語化して考える(説明する)必要

歴史とか哲学は経済学や政治学と違って対象も方法も明確に定義できない。だからこそ、自分がいまどういう土俵の上で歴史を語って(研究して)いるのかを考えられない(説明できない)研究者や教育者は失格ということになるはずだ。

同じことで、歴史の教員はよく「歴史にイフはない」と言うが、歴史小説との区別のためにはそれでよくても、「シミュレーションの訓練としての歴史教育」「多様な選択肢の中での選択・決断を教える歴史教育」を求められたときに、「歴史にイフはない」と言い続けるのだろうか?
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「政治的中立性」とは高校生に棄権しろと教えることか?~学校と選管の役割の違い

昨日の毎日新聞夕刊(大阪本社管内)の「ぶんかのミカタ」欄は、松下良平氏(武庫川女子大教授)の「18歳からの一票下」。ネットにはまだ出ていないようだ。

 たしかに学校では特定政党の指示や反対のための教育は許されない(教育基本法14条2項)。だが中立性の意味を曲解すると、政治について「判断力」(学校教育法30条2項)を養えなくなるおそれがある。政治的判断とは多様な見解のいずれかをより重んじることであり、その点では中立はありえないからだ。今日の若者たちは政治に関心があっても、政策の読み解き方がわからない、という声をよく聞く。両論併記の情報提供にとどまれば、手に余る情報を前に、かえって政治判断に尻込みする若者が増えるかもしれない。
 主権者教育に欠かせないのは、自ら政治判断を下し、他者の見解に照らしながらそれを批判的に捉え直す実践である。そのとき政治的中立性とは、政治的判断の自由を保障し、他人や周囲に流されないよう自律を促すことである。そのためには教師が「他者」となって、異質な(偏った?)見方を紹介することも必要になる。
 一方、この自由や自律を尊重せず、いかに人をうまく騙すかに腐心してきた人ほど、己の似姿を恐れてか、「偏向教育」に神経を尖らせるようだ。歴史を顧みればわかるが、おそらく彼らはSEALDs(シールズ)のような「まつろわぬ」若者の台頭もまた恐れている。

大賛成である。言いかえれば、学校に「政治的中立性」を求める議論の多くは、学校と選管をいっしょくたにしている。
それでは、政治に「唯一の正解」があるかのような誤解は永遠に払拭できない。それでは一党制は可能でも民主主義は維持できない。

ヨーロッパ中心史観という「心配を忘れられる隠れ家」

日本史の保立道久さんがツイッターに下の問題に関わることを書いていたので引用させていただく。実に適確。「心配を忘れられる隠れ家」
https://twitter.com/zxd01342

岩波書店の『図書』が届いた。私は、この雑誌を読むのが好きである。それがどういうことかというとホットするのだと思う。奇妙なことだが、私たちの世代はヨーロッパ中心の教養と知識にふれると、何の役に立たなくても、安心するのだと思う。
けれどこの安心が問題である。内容の半分が早く東アジアと日本の教養世界の事柄となり、次が中東となり、そしてそれらをヨーロッパと共通の感覚と論理で読めるようにならなければならないと思う。一言でいえば現状の日本社会にとっては高級で上品すぎるのだ。これは心配を忘れられる隠れ家のようだ。
隠れ家をなくそうというのではない。隠れ家を広くしようというのだ。そこからどこへでも出ていける広い隠れ家。それは隠れ家とはいわないか。しかし、老子ではないが、そこから遠くをみることができれば、 人は死を怖れず、慌ただしく移動することはやめて静かに生きることができる。普遍的な隠れ家。
(ここまで引用)

年配世代が「安心」するのはいいかもしれないが、しかし、日本人がもつ「外国人イコール西洋人」という感覚が子どもの間でも再生産されている状態を放置していいのだろうか(知識としてテストをすれば来日する外国人の圧倒的多数が中国・韓国・台湾などの人々だと答えられるのに)。教育界やマスコミ、影響力のあるポピュラーカルチャーに携わる人々には、この問題で上の世代が犯してきた「原罪」を認識してほしい。



市民のための世界史Sの最終回

学部高学年・大学院生向けの高度教養教育「市民のための世界史S」(隔週木曜6・7限)の最終回が終わった。毎回15人程度、最終回も11人来てくれた。
この授業4年目にして今年はやっと、毎回前半に大きな流れやキーワードの解説をおこない(教科書そのものはその日にやる章を読んできたことを前提とする)、後半をテーマディスカッション(形式はグループディスカッションが主)にあてることができた。

今日の課題は以下の2つ。
・2030年に世界経済の中心になっているのは、どの国・地域だと思われるか。狭い意味の経済と科学技術だけでなく、人口の大小と資源の有無、政治体制などにも注意しながら討論してみよう。
・「理想の阪大世界史入試問題」の出題例を作ってみよう(ペーパーテストとは限らない)。

一つ目は最初にアメリカ、中国、EU,その他の4択で手を上げさせ、その後少し考えさせてから論拠を説明させた。時間の都合でグループ討論にはせず。説明は数名のみにさせた。これの狙いは人口、政治体制などが状況次第でプラスにもマイナスにもなる点に気づかせることである。未来予測だから当然「正解」はなく、適切な論拠を論理的に示せるかどうかが評価の対象になる。

二つ目はグループで、理想の入試問題案を作らせた。既存の入試の形式や時間と金、採点の容易さなどに配慮する必要は一切ない、という前提で考えさせたが、1グループは通常の論述問題、もう1グループも資料をもとに答えさせる問題(論述or面接)で、形式についての面白い発想などはなかった(3グループとも、現代に関わる問題を考えてくれた点はよかったのだが)。もう1グループがかろうじて、歴史上の事象について新聞を書かせる、当時の人になったつもりで日記とか演説を書かせるなどの、中学・高校のクラスではやっていそうな形式を提案した。

「教養課程の試験の方式も参考にせよ」と言ったのだが、「教科書・参考書持ち込みあり」などの提案はその場ではでなかった。あとで手を上げさせたところでは、持ち込みありのほかにも、パソコンほか調べる道具を大学側が貸し与えるという案が出た。課題を事前に提示して準備させる方法も出てきた。
「図書館で試験をする」(つまり置いてある図書を自由に調べさせる)という方法は、計画している大学があると報道されているはずだが、今回の受講生は新聞など見ていなかったか。外語系・国際系の一部ですでにやられている英語による出題(回答も英語でさせてもいいのでは)なども出るかと期待していたが。

このほか面接やグループディスカッション・グループ発表形式など、いろんなやり方が実際の入試でも試行されてしかるべきだろう。今日は課題の出し方が唐突だったか、いつも面白いことを考える学生もちょっと戸惑っていたようだ。

この授業は都合で来年は開講できないのだが、だれか代わりにやってくれないかな。
今学期の授業はこれで全部終わり。あとは卒論・修論の口頭試問に院入試、学部入試などなど。。。

ゲームデザイン討論会―公開ディスカッション2016.02.07

こういうのに誘われた。詳細は
http://www.gameshistory.net/o-zhirase/gemudezaintaolunhuigongkaidisukasshon20160207

《ゲームデザイン討論会―公開ディスカッション2016.02.07》

■①.ご挨拶
 ゲーム教育はいまや医学や自然科学のみならず、高校や大学での歴史教育・研究に進出しつつあります。

 そこでこのたび、ゲームデザイン討論会は2016年2月7日(日曜)、「ゲームと歴史学との遭遇」というタイトルで、ゲーム教育と歴史学とがコラボする近未来をめざします。場所は三菱グループが出資する公益財団法人「東洋文庫」の会議室。

 歴史のリアリティー、ゲームとしての面白さ、そのバランスをとる新たなゲームデザイン哲学を追求するのが、今回の趣旨です。 

 この2月7日討論会には、AI研究者の三宅陽一郎先生、ゲームマーケット創設者の草場純先生に加えて、永世ゲームデザイナーの鈴木銀一郎先生、ゲームデザイン研究者の岸本好弘先生(東京工科大学)、歴史知学の石塚正英先生(東京電機大学)ほか多くの方々がご出席予定です(詳細は後述)。

 皆さまもご参加して、この白熱討論会でぜひご意見を披露してください。
 経験の有無、性別も職業も関係ありません。
 誰でもいつでも(マトモなことを)言いたい時に言える、それがこのゲームデザイン討論会の目的です。

 ではいっしょに新しいゲーム教育、新しい歴史学のあり方をめざしましょう!

新潟県の世界史研究会

「世界史と日本史をつなぐ」「アクティブラーニング」の両方を扱う研究会。
都道府県を超えた情報共有が進むといいだろう。

主催・呼びかけ人 
目白大学教授 田尻信壹
幹事 県立新発田高等学校内 竹田 和夫
Tel 080(1196)4618 
E-mail:takeda.kazuo(a)nein.ed.jp


平成28年 高等学校世界史教育研究会要項

1 趣  旨  高校学校の現場での世界史教育の授業実践を持ち寄り、学習指導要領に照らしながら歴史的思考力を伸ばす指導内容・教材・評価に関する検討を行う。
2 期  日  平成28年 2月 28日(日) 10:00 ~ 16:45
3 会  場  万代市民会館研修室
          表示は「にいがた社会科学習会」になっています。
        (新潟市中央区東万代町9-1  TEL 025(246)7711)
※新潟駅より徒歩5分  駐車は一台のみ可能です。事前に幹事に問い合わせ
 ください。        
4 日  程   10:00  開会・日程確認他 
[午前の部 日本史教育]
10:05~11:00 
報告「高校生から見た日本史教育と平安時代学修会で学んでいること」
 新発田高等学校2年生 伊藤 優
意見交換
11:00~12:00 グループワーク
「世界史・日本史の史・資料から何を読み取り、何を教えるか」(予定) 
[午後の部 世界史教育・日本史教育合同] 年次テーマ「歴史総合(仮称)への提案」
13:00~14:00
報告「歴史総合の始期の設定をいつにするか」及び「世界史と日本史の境界領域「満蒙」」
新発田高等学校教諭 竹田和夫
「トルコと日本の近代化について」(仮)
          村上中等教育学校 鈴木健一
質疑
15:00~16:00
報告「アクティブラーニングと21世紀型能力」
                        目白大学教授 田尻信壹
質疑
休憩
16:00~ 小報告 ※中堅・若手教員を中心とした実践報告・研究報告 
16:45 閉会
  その後希望者のみ懇親会※新潟駅近く 
17時10分から2時間程度  会費4000円予定 
           
5 参加申込  前日夕方までに郵便・携帯電話・メールなどで幹事竹田までお申込ください。
        
6 備考
・会場には公共交通機関の利用をお願いいたします。今回は駐車スペース確保できません。
・参加希望の方へは第二次案内を差し上げます。懇親会場も明記
プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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