安保法案をラオスで考える

ラオス北部のノンキエウに滞在中。
パテートラオ側に属したこの地域は、かつて米軍の猛爆撃を受けた。
日本の「おじさん」や「男の子」たちが大好きな、アメリカと組んで中国を押さえるといった「大国の興亡」史観とは、違う世界への想像力が、今の日本政府やその支持者になかったら、こういう地域の人々は永遠に浮かばれないだろう。

これは昨日のムオンゴイの街中。砲弾をオブジェにした店があちこちにあった。まだまだ大量の不発弾が埋まっているそうだ。
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日本の「おじさん」や「男の子」たちは、こういう世界を考えたことがあるだろうか。
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ディエンビエンフーの虹

ハノイを出発して4日目にディエンビエンフーに到達。留学時代に来そこなってから来る機会がなかったので、感慨もひとしおである。

早起きしてD1丘に登ったら虹が出ていた。このへんでいちばん高い丘で、ここのフランス軍陣地を奇襲・占領してここから砲弾を降らせたのが、フランスの敗北の直接の原因になったとされる。
P1060745D1丘の虹

ホテルの朝食にハノイ名物のブンチャーが出てびっくり。ドイモイのおかげで全土の交流が進んでいる証拠のひとつだろう。
P1060749ホテルの食堂で朝食のブンチャー

省の博物館で見学。銅鼓が出土するのは、ベトナム人が主張するようにベトナムの一部だからという話には、必ずしもならない。メコン川流域でも銅鼓はいくつも出土しているからである。
P1060750博物館

南シナ海の主権を主張する石。こういうのが全国各省に展示されているのだそうだ。
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ベトナムに着きました

お盆休み明けは阪大史学系初の教員免許更新講習を3日がかりで実施した。
私と秋田さん、中村翼君の毎度おなじみ3名で、世界史の中のアジア史、アジア史の中の日本史の話をした。
受講生は中高合わせて13名。わざわざ阪大の講座を選んで来る先生は、大半が熱心な方だった。

成績入力や本のゲラの返送などばたばたと片付けて今朝からベトナムへ。いつものパターンで準備や片付けに夜中までかかり、数時間の仮眠で6時前に起きて電車で関空へ。搭乗後すぐ爆睡。
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ノイバイ空港の新ターミナル。ここからタクシーで向かったニャッタン橋は、この正月に帰国する際に夜通ったが、昼間渡るのは初めてである。
P1060610ノイバイの新ターミナルから
宿はいつものブイ・ティ・スアン通りのエッフェル・ホテル。買い物に出てインドネシア大使館前を通ると、独立70周年の看板が出ていた(左側。右はベトナムとの国交60周年)。
P1060612インドネシア大使館前

戦後70周年談話

首相によるこの談話が、主体として想定しているのは「日本国民」と欧米人、それにかろうじて中国人だけ。
東南アジアの人々は「もともと無関係な偶発的被害者」かつ「戦後の(上から目線での)援助の対象」という、どこまでも受け身の存在でしかない。

それは実際、保守派だけでない日本人多数派の「常識」であろう。
だがそれなら、「東南アジアになにかというと日本にかみつく政府や国民が存在しなくてよかったですね」といういつもの皮肉を、何万回でも繰り返さざるをえない。

たとえば今回の談話が言及しなかったベトナムのナショナリズムの強烈さ(現在は「反中」の方向に向いているが)と、ホー・チ・ミンの独立宣言に日本軍が引き起こした「200万餓死」が書き込まれている事実は、理解されているかな? 
ベトナム戦争中の日本はどんな役割を果たしたか覚えているかな? 
そのベトナムが現在親日だからといって、「集団的自衛権」でも何でもかんでも味方してくれるだろうと何も知らずに思い込むのは、安直というものではないかな?

平和、そして大きく手をつなげ

安保法案の廃案を求める大阪大学人の会が作ったベトナム語入りのチラシをいただいた。
片方には集会の日時が入っている。

Hòa bìnhは「平和」、Nối vòng tay lớn(大きく手をつなげ)はベトナム戦争中に反戦歌「坊や大きくならないで」で日本にも知られたシンガーソングライターのチン・コン・ソンTrịnh Công Sơnの、南北ベトナム統一を呼びかけた歌のタイトルである。現在でも人気があり、ユーチューブ上にいろんな音源が載っているが、ご本人が75年4月30日に歌ったというのもある。
https://www.youtube.com/watch?v=SLp44y2CLag

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通常の歴史教育が役に立たない理由

「市民のための世界史」と「アジア史学基礎C(東南アジア通史)」の採点が終わり、次は「文学部共通概説」のレポート。文学部1回生向けの授業で、学生が専修を決定する材料にするために、各専修から1~2名の教員が出て自分の研究や専修のことを紹介する、どの教員のを聞いてもいいがうち2人にレポートを提出する、という形式である。私が出した課題は:

現在の高校で教えられている歴史が、一般的に言って21世紀の世界で生きていくためには役に立たない理由を、教えられる内容(世界史・日本史それぞれ)、教え方の両面から説明せよ。
つぎにその改善策を提案せよ(科目そのものの変更案も含む)。

ネットで現在の地歴科再編の議論を拾ってくる学生だけでなく、多数の高校教科書の記述を比較する学生(高校教員志望?)もおり、今年は「歴史など役に立たないし金にならないと言われたらどう反論するか」などの課題を課していた例年と比べて、なかなか面白いものが多い。「役に立たない面、それは自虐史観」とかいうのもあるが。
プロフィール

ダオ・チーラン

Author:ダオ・チーラン
ヒツジ年生まれで写真のニワトリに深い意味はない。横浜で生まれ育った関東人だが、大学入学後現在まで関西で暮らしている。
本業は歴史学者で、専門は中・近世のベトナム史、海域アジア史、歴史学の評論・解説など。
趣味はパ・リーグを中心としたスポーツ、鉄道ほか。
このブログの意見はすべて筆者個人のものであり、いかなる組織にも関係ありません。

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